いつから人生の傍観者になったのか

広島にUターン就職して以来、毎月サッカースタジアムへ観戦に行っている。サンフレッチェのサポーターとして選手の背中を声で後押しするために。シーズンチケットを買い、試合2時間前にスタジアム入りして、試合前の選手ウォーミングアップから試合終了まで全力を尽くしている。
サッカーを見るのは面白い。強烈なミドルシュートが決まると血が湧き立つし、スタジアム全体の狂乱に身を浸して、自らも白目を剥いて発狂している。あまりに口を大きく開けすぎて、顎関節症が慢性化した。痛いの痛いの、飛んでいけ~!と念じるも、痛みはエクスポネンシャル的に膨れ上がっていく。あぁ、痛い。
会社員生活は実につまらない。部署内でもダントツの激務チームに配属され、血尿が出るほどメンタルを消耗している。会社でどれだけひどい目に遭っても、「今週末はサンフレッチェの試合があるから、それまで頑張ろうや」と自らを奮い立たせられた。サッカー観戦のおかげで週末に楽しみができた。サンフレッチェが、生き甲斐になってくれたのだ。
サッカーは一人で観に行っている。サポーターズシートの自由席にて、試合中は声出しとブーイングに集中している。一人でも特に寂しくはない。というか、ジャンプでヘトヘトになっているため、寂しがっている余裕がない。得点が決まれば周囲の方々とハイタッチをし、健康で文化的でファンタスティックな交流を楽しめている。
サポーターズシート唯一の欠点は、グラウンドがほとんど何も見えないこと。応援団員が目の前で大旗を振り回すので、特にこちらの攻撃時、旗の後ろの我々は旗しか見えない。得点が決まったかどうかはスタジアムの歓声で判断する。サッカーを観に行っているのか、旗を観に行っているのか分からなくなる。自分としては、どれだけ大声を出しても怒られない、むしろ出せば出すほど褒めてもらえるカラオケのようなものと捉えている。実際、サッカー観戦後はスッキリするし。
先日、サンフレッチェのゴールキーパーがワールドカップ日本代表に選ばれた。公式試合の後、その選手を世界へと送り出す壮行会があった。ビデオを通じて様々な恩師から激励の言葉があり、スタジアムが感動的な雰囲気に包まれ、そのすぐ横でマスコットキャラの頭が脱げておっさんが露出して大パニックに陥った。
選手が場内をラウンドし、最後にサポーターズシート前に来てくれた。もちろん、我々は全員で選手のチャントを歌い、世界での活躍を応援した。広島から代表選手が出るって、すごい。どうか世界を驚かせて欲しい。相手を広島弁で威嚇してビビらせるぐらいのことはやってもらいたい。
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選手がバックヤードに消え、場内が静かになったとき、ふと疑問に思った。私はなぜ、誰かの応援に全力を注いでいるのか。なぜ、自分の時間を他人に捧げているのか。なぜ、自らの人生に期待せず、トップアスリートに夢や希望を託しているのか。私は果たしていつの間に人生の傍観者になってしまったのか。
中学三年生から高校三年生まで、広島県代表として四年連続で国体馬術競技に出場した。中三では優勝し、高三まで四年連続で入賞した。あの頃は自分のことにしか関心がなく、馬に乗っているときはもちろん、乗っていないときも、学校の授業中でも、どうすればもっと馬術が上達するか考えていた。辞書ほどもある分厚さの馬術専門書を読みふけり、内容を完璧に暗記した。馬の世界に没頭するのが快感で、いつまでもこの業界に携わっていたいと心から願った。
現実問題、プロの馬術選手になったら、金銭的に苦しい生活が待ち受けている。乗馬クラブから払われる給与は最低賃金以下で、使用する道具は、目玉が飛び出て地球を一周して後頭部に当たるほど高い。お世話になっていた先生たちは口癖のように「お金がない…」とこぼしていた。こういう貧しい生活はしたくないんだよな。乗馬は趣味で楽しめたら十分じゃないか。全国の頂にまで立った世界に別れを告げ、大学受験を経て北大に入った。
北大では新しい夢を見つけた。研究者になろう、と思ったのだ。学部四年次に初めて実験をしたとき、自らの手でまだ見ぬ知見を産み出す営みに心が震えんばかりの興奮を覚えた。研究者になるには業績が必要で、血眼になって論文をたくさん書いた。そのおかげか、同世代で700人しか採用されない日本学術振興会特別研究員DC1に採用されたし、筆頭論文が海外のトップジャーナルにアクセプトされた。
だが、研究者としてさらに飛躍すべく赴いた英国留学でつまづいた。渡航して向かったラボが廃墟みたいなところで、研究員も教授もいなければ、実験道具もなく、徹底した放置プレーを食らった。学部時代から懸命にためた何百万円ものお金が、イギリスで無為に溶けていった。加えて、研究ポジションを探し始めたころ、公募で女性枠が増えてきた。どのページを見ても女性限定公募が目立ち、男の私は応募できなくなった。こんなにあからさまな差別なんかあってたまるか、と悲しくなった。イギリスで受けた人種差別なんかよりも遥かに陰湿だ。
研究や研究者に対する憧れは粉々になり、仕方がなく民間企業に職を求めた。大学院で研究を続けるのも辛くなり、研究のペースを上げて業績を集め、最終的には博士課程を一年飛び級して修了した。
会社はアカデミアと違い、人材はいつ何時でも代替できる。誰でもできる業務を回され、ミスなく滑らかに処理することが求められる。会社で働き始めて三カ月後には、早くもアイデンティティーを失った。何のために生きているのか分からなくなり、ストレスをためすぎて血尿が出た。家に帰るとき、河川敷で石の上に座って、夜空をボーっと眺めた回数も数知れなかった。
高校時代までは人生の手綱を握っている実感があった。大学→大学院→企業と進むにつれ、制御不能な因子が増えていった。会社に入って以降、マラソンランナーでスタミナ自慢の私が、会社から帰ったらもう身動きを取れないレベルで疲れきっている。この世界では、自分ではどうにもならない要素が、あまりに多すぎる。人生の舵を取るコックピットにいるのは間違いないが、操縦桿を常に他人に握られ、手出しできなくなっている。
歳を重ねるにつれ、運命の流れに逆らう体力や気概が失われていった。だからこそ、いま目の前で輝いているサッカー選手たちが眩しくて仕方がない。私が叶えたかった数々の夢を選手に託し、私の代わりに叶えてもらいたい。それで自分の生活が良くなるわけではないのだけれども、過去の想いを昇華させる方法として最も適しているように思えた。だからこそ、サンフレッチェを全力応援していたのではないか。
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本屋でたまたま英検と出会い、勉強していくにつれ、考えが変わってきた。人生の手綱を、もう一度握り直してみたい。夢を他人任せにするのではなく、昔みたいに自分の力で成し遂げてみたい。
誰かに夢を叶えてもらうのは楽である。すごいヤツを見つけて応援していれば、そこそこの確率で願いは叶えられる。会社員になり、周囲の力を借りて仕事する機会が増え、他人を上手に使うことのメリットを実感させられている。誰かにやってもらう方が楽だし早い。個人プレーの趣向は失われつつある。
残念ながら、デカい仕事を成し遂げて得られる高揚感は一時的で、熱が冷めるとすぐ「自分はちっとも大したヤツじゃないんだな」と悲しくなる。一人で何でもできる自分に酔いたいわけではないけれども、自分が携われる範囲があまりに狭いと、何事につけて達成感を得られない。当然、誰かに夢を叶えてもらえたとて、さほど嬉しくない。
仮にサンフレッチェの選手に世界で活躍してもらえたとて、次の日には”自分も世界で戦いたかったのにな”と無力感に打ちひしがれるだろう。本当は海外で研究者になるはずだったのになれなかった自分が情けなくてたまらなくなる。私は、私の手で成し遂げたい。自分の足でゴールまでたどり着き、己の身体でフィニッシュテープを切りたい。100kmマラソンを二度完走して知った。目的地までの道程が苦しければ苦しいほど、旅を終えたときの充実感は深いのだと。
オリオン座の左肩にあるベテルギウスは、地球から500光年離れているという。私たちが見ているのは、500年前にベテルギウスが発した光なのだ。会社で無力感に苛まれるたび、私もかつての自身が発した光を眺め、その残照を手でかき集めている。遠くの星に目を細めるのは、もう存在しない過去を眺めるのと同じ。思い出は月日が経つにつれ美化されていくから、そのうち何を見ているのかもよく分からなくなってくる。
今の私は、過去28年間、懸命に生き抜いてきた歴史の上に成り立っている。幾多の苦難を乗り越え、死にたい、死にたいと思いながらも、未来に対して抱いたわずかな希望を握りしめて歩んできた。だからこそ、今この瞬間の自分に最大限のエールを送りたい。昔の光を懐かしむよりも、今を眩いばかりに輝かせ、未来を自分の見たい世界で形作りたい。己の人生を最前列で応援できるのは自分だけなのだから、自分にはなるべく良い景色を見せてあげたい。
人生の傍観者は先月いっぱいで終わりにする。これからの自分に期待して期待しまくって、どんな時でも背中を後押ししてあげるプラチナスポンサーになる。


一級はあと少しの所で落ちた。合格最低点に2%届かず、単語2問分、リスニング問題なら1問分の僅差で落ちた。お〇ぱい、おっは〇いと連呼したのがいけなかったのか。さっきは伏字にしておいたじゃないか。これぐらい勘弁してくれよ、マジで。
ライティングの採点基準には首をかしげたくなる。エッセイで7割取れているのに、要約が25%ってどういうことだろう。わんこそばのわんこ抜きぐらい意味が分からない。
けれども、そもそもリーディングとリスニングでもっと取っていれば合格出来ていたし、この回でもしっかり高得点で通っている人がいる以上、何も文句は言えまい。おそらく隣の天才コナンくんも合格しているだろう。おめでとう、二次試験も頑張れよ。おじさんより先に〇っぱい… じゃなかった一級を取ってくれ。
10月に第二回試験がある。今から10月まで三カ月間、リターンマッチを成功させるべく、目からアルファベットが出てくるほど英語を頑張りたい。思い切ってロンドンにでも行ってみるか。
とりあえず、米国マイクロン株の超絶決算で膨れ上がった金融資産でも眺めて心を慰めよう。Micron, boy, Micron is great…
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~COMING SOON~

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