イギリスに3か月留学して失ったもの

こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大化学系大学院生のかめ (D2)です。D1・10月から12月まで英国・オックスフォード大学へ私費留学ました。

先日の記事では『留学してみて良かったこと』を5つご紹介しました。この記事ではその反対に、留学して失ったものを4つ解説していきます。

かめ

それでは早速始めましょう

目次

時間:博士課程一年早期修了への道がほぼほぼ断たれてしまった

オックスフォード大学に留学したのはD1の10~12月。実験をやりに行ったにもかかわらず、結局実験を何一つやらせてもらえないまま時間だけが過ぎていったのです。3か月間で1mmでも、ほんの少しでも研究が進めばまだマシでした。進捗がたとえ僅かであっても「このデータを得られたのだからイギリスまで行った甲斐があったな^ ^」と頬を緩められたはずだから。進捗はゼロ。文字通りゼロ。むしろマイナスかもしれません。3か月間、専門書などを一切読まずに論文だけ読み過ごしていたため、日本で蓄えた専門知識がゴッソリ抜け落ちてしまっているはず。

私、実は博士課程の一年早期修了を狙っていました。専攻で定められた規定本数だけ論文を出して早期修了し、企業へ勤めて一刻も早く両親に学費を返済し始めたかったからです。ただ、早期修了は最早見込めなくなりましたあと1年では規定本数分の論文を出せそうにないためです。就活自体間に合いません。夏季/冬季インターンシップや説明会に何ら参加していないのだもの。

当初、オックスフォードで得られた研究成果を論文化して一報出すつもりでした。研究成果が全くのゼロでは論文をどうやったって書きようがありません。いま手元にある完成済みの原稿に留学中に行う実験のデータを追加して雑誌へ投稿する予定もあった。それさえ遅延してしまいました。渡航2か月目、月末に”もう追加実験は見込めない”と見切ってようやく投稿の運びに。D2での博士修了ではなくD3、つまり通常年限での修了。イギリスで3か月も時間を空費してしまったうえ、日本へ戻ったら一年余計に大学院へ行かねばならなくなりました…

100万円以上のお金:大金費やして成果は微小

オックスフォード大学へ研究のため滞在するにあたり、日本円で月14.5万円もの在籍料を大学に支払いました。よって、3か月の滞在で44万円消費したことに。また、ホームステイ先に家賃として月に12万円、3か月で36万円もの提供。日英往復渡航費に27万円。生活費を考慮せず、必要最小限の出費だけで併せて107万円もの巨額な支出に。生活費を入れればのべ140万円程度になるかな?いずれにしても、大学院生にとって100万円以上のお金はあまりに巨額です。

100万円以上費やして得られた実験成果は文字通りゼロ。まさか実験ノートが白紙のまま帰国することになるとは予想だにしなかった。この100万円は全て自腹。指導教員にも両親からさえも1円すら拝借しておりません。身銭を切って留学しなくちゃ、”自ら進んで何かを学び取ろう”という気におそらくならないでしょう。学部時代からせっせとお金を貯めたり、M2のとき学振DC1に内定して留学資金を作ったりしました。やっとの思いで拵えたお金をほとんど無駄にしてしまったのです。泣きそう。本当に辛い。”イギリス生活を経験できた”という意味で総合的に見れば成果はあるものの、わざわざ博士課程の間にせずとも済んだ出費だったのではないでしょうか…?大金費やし成果は微小。巨額のお金を失い素寒貧になっただけの3か月間でした。

英国に対する憧れ:汚い部分をたくさん見て幻滅

本当に愛してやまないモノは憧れのまま留めておくに限る。イギリスに住み、イギリスやイギリス人の嫌な部分をたくさん見て幻滅してしまいました

たとえば人種差別。レジ係のイギリス人男性が私の顔を見るや否や、露骨に嫌な表情を浮かべて商品を投げ捨てるように会計されたことが。私のひとり前に会計を済ませた西洋人男性との応対では笑顔。 (たぶん”イエローモンキー”と思われているのだろうな…) と悲しくなってしまいました。また、イギリスの道路にはゴミがたくさん落ちています。不潔。あまりに道路が汚い。街中にたくさんゴミ箱があるのにどうしてそこら辺にポイ捨てしちゃうのだろう?紳士の国じゃなかったのか?ポイ捨ての一体どこが紳士的なのか?

一番胸が苦しくなったのが大勢のホームレスの存在。中心街のお店の軒下で布団にくるまり寒さに凍えていたのです。一人や二人じゃありません。何十人も見かけました。どうやら移民でもなさそうな感じ。純粋なイギリス人が路上に座り、行きかう人々に「お金を下さい…」と悲しそうに無心していました。かたやオックスフォード大生は夜のパーティーに備えて華やかな装い。かたや大勢のホームレスはボロボロの服をまとって明日をも知れぬ生活に恐々としている。(なんなんだ、この格差社会は…) と愕然とさせられました。私からはホームレスたちに何ペンスか渡してあげるしか出来ず、「乞食の生まれる社会を作ったオックスフォード大学は正義なのか?」と深く考えさせられたものです。

健康な体:ストレスで心身に異常をきたした

私は音に敏感な気質。近くで誰かが鼻をすすったり咳ばらいをしたりする音を聞くだけで心臓がキュッと締め付けられる。元来、ストレスに弱いです。一定期間ストレスを受け続けたら全身に蕁麻疹が出てしまうほどに。日本ではストレス解消のために週5~6日、早朝にランニングしていました。走って気分転換している期間は心臓の発作はほぼ起こりません。

ところがイギリスでは歩道の段差が多く、どうしてもランニングを見合わせざるを得ませんでした。するとストレスが溜まります。日に日に蓄積されていく。

  • 研究の進捗が無いストレス
  • 博士早期修了への道が日に日に狭まっていくストレス
  • ラボに来る学生の何気ないく鼻をすする音に対するストレス
  • ホームステイ先の家主の10秒ごとの絶え間ない咳払いに対するストレス

など、どこに行ってもストレスから逃れられずに緊張状態が続いたのです。渡英から1か月が経過した頃には胸が小粒の蕁麻疹だらけ。慢性的な吐き気が続いて食欲が徐々に衰えていきました。1か月後には心臓が痛くなる (心筋炎??) ほど体の状態が悪くなりました。息をするだけで苦しかった。死んでしまおうかと思ったほど。当初の留学予定期間は3か月ではなく2倍の6か月間。3か月も短縮して終えたのは、研究面以外にも健康面でのトラブルが重症化してしまったからなのです。留学に行けば慣れない環境で頑張るがゆえにストレスが溜まります。私に異国でのストレスに耐えうる力はほとんどありませんでした。

最後に

ヨーロッパに留学して失った4つのものについてはコレで以上。まとめると、

  • 時間:博士課程の一年早期修了への道がほぼほぼ断たれた
  • 100万円以上のお金:大金費やして成果は微小
  • 英国に対する憧れ:汚い部分をたくさん見て幻滅
  • 健康な体:ストレスで心身に異常をきたした

このような形になります。

本記事では留学の負の側面だけしか書いておりません。決して悪い面ばかりではなく良い面も当然ありますので、メリット/デメリット両者を比較したうえで留学へ行くかどうかのご判断をお願いします。

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