ミソフォニアの私が海外留学へ行ったらどうなったか

こんにちは。札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (D2)です。鼻をすする音や痰の絡んだ咳払いの音など、特定の音に強烈な不快感を覚える『ミソフォニア (音嫌悪症)』という病気を患っています。

2023年10月から3か月間、英国・オックスフォード大学へ研究のため私費留学しました。この記事では、ミソフォニアを持つ人間が海外留学へ行くとどうなるかについて解説します。なお、本記事には少々生々しい表現 (血を吐く, 身体を突き刺されたような, など)があります。そうした情景を思い浮かべて不快な気分に陥りたくない方は読むのをご遠慮ください。

かめ

それでは早速始めましょう

目次

結局嫌な音からは逃れられない。猛烈な辛さを引き続き味わう

海外へ飛び立つ前まで私は日々、嫌な音に悩まされっぱなしでした。20秒に1回の高頻度で咳払いする方が所属研究室の中に居たからです。どうやら病気で痰が絡むらしい。気道を確保するため仕方のない生理現象なのでしょう。でも、私にとっては辛さの根源。もはや聞くに堪えません。その方が部屋に居るときは同じ部屋の中に居られなくなってしまいました。

留学先にはさすがにこうした咳払い人間はいないだろうと思っていました。実際、それはいなかったんだけれども、新たに別の問題が生じてしまったのです。なんと、5秒に一回鼻をすする人々が同じラボの中にいました。ラボメンバー3人全員が超多頻度で鼻をすする人たち。一人が”スンっ”と鼻をすすったかと思えば別の人がまた”スンっ”とすする。三方を鼻すすり音で取り囲まれてしまって逃げ場がありませんでした。

私は咳払いの音より鼻をすする音の方が何倍も苦手。トリガー音を聞くと心臓がキュッと締め付けられてしまいます。それだけ嫌な音を絶え間なく、三方から聞かされ続けたのです。辛かった。猛烈に辛かった。日本で味わった苦痛が可愛く思えてくるほどあまりに辛い3か月でした。以前、何かの書籍か動画で「海外では鼻をすするのはマナー違反だ」と見たような記憶が。平気ですすっているじゃないか。日本を出ても嫌な音からは結局逃げられませんでした。

度重なるストレスで体がおかしくなる。私は蕁麻疹と心筋炎が出た

研究室だけじゃありません。宿泊先でもトラブルが生じたのです。

オックスフォードでは地元住民の家へホームステイさせてもらいました。最初は”シェアハウスに住もう”と考え物件を探していたものの、渡航前までにどうしても見つけられず、「泊めてあげよう」と申し出て下さった方のお宅へお邪魔することに。泊めてもらえたのはすごく有難い。寒空のもと野宿するのを回避できただけでも幸せ。ただ、ホストファミリーの奥さんが10秒に一度、咳払いをする方でした。朝から晩まで延々と苦手な音を聞かされ続けて辛くて涙が。

家と研究室の両方ともで嫌な音に悩まされました。どこにも逃げ場がない状態。体がストレスに侵され、当然の成り行きで健康が崩れました。渡航1か月後には胸回りへびっしりと小粒の蕁麻疹が生じます。その2週間後には心筋炎 (心臓の炎症)が疑われる症状が出てきました。瞼の痙攣はほとんど常時。深く息を吸い込むと胸へ”ピリッ”と刺されたような痛みが走る。日本でこうした症状が出なかったのは、家に帰れば嫌な音から解放され寛げたからです。家でも出先でも辛さに悩まされることなど今まで無かったもの。札幌のワンルームアパートが恋しくて仕方がありませんでした。渡航3週間後には既に「早く帰りたい…もう勘弁してよ…」と一人で呻いていたほどです。

海外を楽しむ余裕がないほど辛くて本気で死にたくなる。”自分の居場所なんてこの世のどこにも無いんだな”と悟る

せっかくイギリスまで行ったんだもの。オックスフォードを拠点にロンドンやバース、マンチェスターにブライトンなど色々見て周りたかったです。…全然見て周れませんでした。ストレスに頭を侵され、”観光に行こう!”という気にもならなかったもの。一度だけ、渡航期間の真ん中に気力を振り絞ってエディンバラまで行きました。旅先ではきれいな景色を見られて心が大変軽くなったものです。しかし、オックスフォード-エディンバラ間の移動中に周囲で鼻をすすられました。ストレスで気分がだだ下がり。「行かなきゃ良かったかも…」と落ち込みつつ、咳払いのうるさい家に帰って再び酷く苦しまされました。

日本で散々苦しい思いをした。(イギリスでは楽に過ごせるだろう…!) と一縷の望みを託して留学。望みは無残にも散り果ててしまった。絶望。あまりに希望がありません。自分が楽に過ごせる場所などどうやらこの世に無いらしい本気で死にたくなりました。これほど強く『命を絶ちたい』と願ったのは人生で初めての経験。せめて日本に帰ってから死にたいと思ったので自殺を思い留まれたけれども。

まだ日本で辛さを味わう方がマシ。留学なんて行かない方がいいよ

ただでさえ住み慣れていない環境下に置かれてストレスを蓄積してしまいます。まして、ソコに”嫌いな音”まで合わさったなら、ミソフォニアで味わわされる辛さは日本時代の数倍、いや数十倍にまで膨れ上がるでしょう。どうせ辛い思いをするなら辛さが少ない方がマシ。だったら日本の方が良い。日本で暮らした方が音の辛さを抑えて幸せになれそうな気が

ミソフォニアの方には声を枯らして「留学なんて行かない方が良いよ」とお伝えしたい。行ったら私のように体を壊して辛くなるだけだから。海外に救いや夢を求めてもおそらく望みは叶えられないでしょう。日本で聞こえる嫌な音は海外でも同様に人から発されています。我々ミソフォニア患者は日本で頑張る他にありません。各々の感じるストレス量の最も少ない環境で生き延びるしかないのです。

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