学術論文が四回連続のリジェクトを経て五度目にアクセプトされるまでの一年間【ビッグジャーナル行脚の果てに】

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D1・8月末:論文完成!Angewandte Chemie(IF14)へ初回投稿→2日でリジェクト

一度目の投稿はドイツの国際雑誌【Angewandte Chemie (アンゲヴァンテ ケミ)】。インパクトファクター (IF)は14。我がB報の初回投稿に相応しい一流雑誌。

指導教員からは当初、『もっとIFの高いジャーナルへ投稿してみてはどうか』と言われていました。Advanced Materials (IF≈30)やNature Communications (IF≈20)、もしくはJournal of the American Chemical Society (JACS, IF16)でもいいんじゃないか、と。IFの低い雑誌から高い雑誌に格上げして投稿するのは難しい。でも、高い雑誌から低い雑誌にランクダウンするのは簡単だもの。先生の気持ちはよく分かります。何かの間違いで高IFジャーナルの査読に引っ掛かったら僥倖ですから。万が一アクセプトでもされれば超ラッキー。先生的にも研究力に箔を付けられ鼻高々だろうし、対外へ宣伝をしやすくもなるでしょう。

私は指導教員からの注文をお断りしました。自分の論文には一定の価値を見出していたものの、IF20やIF30の雑誌に載るほどの価値は無いと思っていたからです。IF15ぐらいが上限。IF10でも十分だと感じました。載るはずのないジャーナルへいくら投稿したって無意味なんですよ。『貴方の論文は編集者によってリジェクトされました』との悲しい知らせを受け取るたびに心が八つ裂きにされる。時間の無駄でもあると思いました。一つの雑誌へ投稿の手はずを整えるために1週間。投稿後、雑誌の編集者による軽い査読が行われるのにプラス1週間。編集者からリジェクトされたらその2週間で終わり。査読に回り、査読者からリジェクトされる場合はプラス1~2か月かかっちゃう。ビッグジャーナル巡りをしている間に他グループに先を越されてしまいかねません。ただでさえ高いIF雑誌に載るか載らないかギリギリのラインなのに、先を越されて論文の新規性を落とされてしまっては高IF雑誌へのアクセプトなど望むべくもありません。

ということで、指導教員との駆け引きの末、初回投稿先をAngewandte Chemieに決定。(せめて査読に引っ掛かってくれたらいいなぁ)と願っていた所、投稿から2日後に早くも編集者から返事が届きました。リジェクトだそうです。査読にも引っ掛かりませんでした。論文のレベルが雑誌の求める水準に全然達していないらしい。要は、成果のインパクトが不足しているということ。まぁ、仕方がありませんね。実験データはデータなのだから変えようがないもの。ヘタにいじくってしまったらそれは立派な研究不正。研究を続けるどころじゃなくなります。論文のインパクトに相応しいIFまで投稿雑誌の格を落としていくしかありません。

D1・9月末:Nature Communications(IF19)へ二度目の投稿→2週間でリジェクト

IF15の雑誌にリジェクトされたら、普通、次はIFを下げて投稿しようとするじゃないですか?私もそうしたかったですよ。そうしたかった。だってそれが一般的な感覚だもの。IF15でダメなら12へ、それでもダメなら10へ、8へ…とレベルを下げていくべきだと思います。北大水産学部の入試に落ちた後、続けて東大理科二類を受けに行くヤツなんていないもん。万が一にも居たらその人は狂人ですよ。メンタルは強靭。頭は狂人… なんちゃって。

セオリー通り指導教員へIF12程度の雑誌への投稿を提案しました。ところが何を思ったか我が指導教員、『IFをもうちょっと上げてみたら?』と言い出したのです。初回投稿先がIF15程度の雑誌だったのがあまり意に沿わなかったのでしょうか。”二回目投稿先のIFを上げれば高IFジャーナル行脚を続けられる”と見込んだのかも。『Nature Communications (IF19)なんてどう?』と仰った。『Advanced Materials (IF30)でもいいんじゃない?』とも言っていたかな。

コレには両目が飛び出るほど驚きました。「ちょっと!一体何を言いだすんですか、先生!!」って。いくら投稿雑誌のIFを上げた所でアクセプトされやすくなるわけじゃありません。むしろ、IFを上げれば上げるほど論文に要求されるレベルが高くなり、アクセプトされにくくなる仕組みなのです。わざわざアクセプトされにくくなる、アクセプトまで時間のかかる道を選んでどうするんだ。高IFジャーナル行脚をしている間に他グループに先を越されたらどうしてくれるんだろう…

2~3年という時間制限のもと一定数の論文を出版せねばドクターを修了できない自分には迷惑な話。かといってココで指導教員を敵に回せば博士課程をフィニッシュできなくなる。「もうっ… 分かりましたよ。でも一度だけですよ?」と条件付きでNature Communications (IF19)へ投稿。案の定、2週間でリジェクト。リジェクトされるだなんて百も承知でした。リジェクトのお知らせを受け取ったのがちょうどオックスフォード大学への留学を始めた頃。留学のドタバタでストレスを溜めている所にリジェクトの通知を受け取り、発狂。

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