D1・10月末:ACS Applied Materials&Interfaces(IF10)へ三度目の投稿→1週間でリジェクト
指導教員も現実を理解したのか、IF10程度の雑誌への投稿を認めてくれました。最初からIFを下げて投稿していれば時間を無駄にせずとも済んだのに。一か月もの貴重な時間を失いました。Nature Communicationsにさえ投稿しなければ論文を一か月早く出版できたのだけれども… 論文の有する価値は論文を書いた人が身に染みて理解しています。論文を一人で書き上げた私が「アクセプトされるわけがない」とまで言ったジャーナルに投稿し、ものの見事にリジェクトされるだなんて至極真っ当な結果。
論文投稿で最も注意すべきなのは【論文の価値を過大評価すること】。苦労して書き上げた論文だけに思い入れもあるでしょう。研究を愛しすぎるが故に盲目的になり、自分の論文に宝石の如き価値を見出したくなるかもしれません。ただ、自身の思い入れの強さが仇となり、投稿雑誌のレベルを間違えて出版までタイムロスとなる可能性が。大切な論文だからこそ一歩引いて冷静に・正確に価値を見定めるべき。その論文に相応しいレベルの雑誌へ投稿してあげねばなりません。別に雑誌のIFが低いからって論文の価値に傷は付かないんですよ。高IFも低IFも論文は論文。同じですから。
三度目の投稿先はアメリカ化学会 [ACS]の発行する雑誌。IFは10程度。過去にアクセプトされた論文は粒ぞろい。(とりあえず早くアクセプトされて欲しい)と思いました。いつまで経っても論文を出版できずに苦しくて仕方がありません。残念ながら、ココでもリジェクト。投稿から1週間足らずでエディターズキックを食らったのです。IFなんてどうでもいいから早くアクセプトされてくれモードに突入。IFの高い順にジャーナルを巡る行脚を続行する気力が失せました。
D1・11月中旬:Materials Today Energy(IF9)へ四度目の投稿→査読へ回るも2か月でリジェクト
海外留学中に食らうリジェクトほど心を裂き、傷つけるものはありません。まして、留学先の研究室に誰も来ないとなると、話し相手すら居らず、憂さ晴らしのしようもない。頭がおかしくなりそうでした。物事を論理的に考える能力が失われてしまったのです。ストレス過剰で口から言葉がスムーズに出て来なくなったほど。日本語の本の音読によって発声能力だけはどうにか維持させられたものの、腰を据えて何かを冷静に考える余裕はもうどこにもありませんでした。
心があまりにも傷付くと、心の痛みに鈍感になっていくことが分かりました。IF10の雑誌に蹴られた。ふ~ん。それで?次はIF9の雑誌?もう、好きにしたらいいんじゃないですか?僕が何を言った所でその雑誌を投稿先に選んでくれないんでしょ?だったらもう何も言わないでおきます。先生の好きな所へ投稿すればいいじゃないですか…
四度目の投稿先はElsevier社が運営するMaterials Today Energy。2016年に創刊された新しい雑誌。IFは最近、上昇傾向に。現在のIFは9.3。一年後には確実にIF10を超えているでしょう。歴史の浅い雑誌は伝統ある雑誌よりも幾分アクセプトされやすいらしい。(今度こそアクセプトされてくれたらいいな…)と体中から希望をかき集めて投稿。
四度目の投稿にしてようやく査読に回りました。査読結果が出るまでは1~2か月。ココはもう、じっと待つしかない。私にできるのはせいぜい神頼み程度ですから。2か月後、査読結果が返ってきました。リジェクトだそうです。あぁ、またか… もはや一滴の涙さえ流れないほど消耗しきっていました。虚無ですよ、虚無。美味しい食事を食べる気にもならぬほどの無気力感。
D1・2月初旬:Journal of the Electrochemical Society(IF4)へ五度目の投稿→査読に回ってアクセプト!!
一度や二度のリジェクトなら持ち堪えられます。流石に四度もリジェクトされたら辛いです。『お前のやっている研究には価値がない』と言われたようで切ない。(価値がある)と信じて論文を作ってきただけに、信念を土台から揺るがされ、激しく動揺させられました。果たしていつになったらアクセプトまで漕ぎつけられるのでしょう。博士課程、出られるのかな?いつまでもB報だけに労力を割いてはいられないのだけれども。C報、D報…と次々書いていかなきゃいけないのに。
オックスフォードから札幌に帰還。日本食や日本人との日本語での会話を通じて傷付いた精神環境を修復させました。指導教員と今度の論文投稿先に関して打ち合わせ。『もう好きな所に投稿して良いよ』と言われ、”それでは”とIF4程度の雑誌への投稿を決定。ココだけの話、もしもこの雑誌からリジェクトを食らったら博士課程を辞めようと思っていました。IFひと桁台前半の雑誌の査読にも引っ掛からなければ、博士課程在籍中、何をどう頑張っても論文を出版できず、修了要件を充足するのが難しいからです。
背水の陣を敷いて迎えた五度目の投稿。強い思いが通じたのか論文が査読に回り、1か月後、リジェクトではない返事が来ました。原稿をササっと直して対応。再投稿から2週間でアクセプトの通知が届いたのです。「あぁ、やっと終わったのか…」と心の底から安堵しました。コレでもう二度とこの論文を誰かからリジェクトされずに済む。アクセプトに嬉しさは微塵もありません。最初からこの雑誌に投稿していれば半年早くこの世に公開できたのにな、、と。まぁ、初回投稿先にIF15の雑誌を選んだのは自分。その後の投稿先も最終的には自分が首を縦を振った結果なので何も文句はありません。
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