
雑誌会に向けて

つくばから札幌への帰還後、私に休息は許されなかった。1週間後に控える雑誌会の準備が、論文選びの段階から手つかずのまま残されていたのだ。選んだ論文があまりに大部で消化不良を起こし、別の論文を一から読み直す羽目になった。発表まで残り5日という切迫した状況で、ようやく扱う論文が定まった。
本来なら、つくば出張からの帰還後、心身を休ませたかった。しかし、そんな贅沢は許されず、目の色を変えてスライド作成に没頭した。前日になってようやく資料が完成し、発表練習に励んだ末、本番を何とか乗り切った。
学会発表へ

しかし、これで一息つける状況ではなかった。雑誌会からわずか1週間後には、日本の電池業界最大の学会での口頭発表が控えていた。幸いにもスライドは既に用意されており、研究室内での発表練習での指摘を反映して微調整を重ねた。
15分間の口頭発表は無事に終え、質疑応答では密かに憧れていた研究者から2つの質問を頂戴した。そして最後に「とても面白い研究でした。今後も頑張ってください!」という言葉を贈られた。私は思わず「はいっ!」と元気よく返事をしてしまった。もしかしたら社交辞令だったかもしれない。しかし、自分の研究を「面白い」と評価されたのは初めての経験で、他者にも面白さが伝わったことに心から喜びを感じた。
博士進学フェローシップ申し込み

学会発表の3日前、研究室でスライド作成に没頭していた私のもとに、指導教員が突然現れた。「かめ、ちょっと来て!」という慌ただしい呼び出しに、何か不手際があったのかと不安が過ぎった。
教員室では同期のM1も呼ばれていた。そこで博士課程進学者向けのフェローシップの存在を知らされた。私たち二人のD進後の生活を支援する貴重なチャンスだったが、驚くべきことに締め切りまでわずか3日しかなかった。
A4用紙5枚分の申請書作成は、学振DC1に匹敵する労力を要する作業だった。博士課程での研究計画や社会へのインパクトなど、綿密な記述が求められた。締め切りに間に合うかという不安が頭をよぎった。だが、この機会を逃すわけにはいかなかった。「絶対に間に合わせます!」と即答した。
3日間、朝8時から夜21時まで研究室に籠って作業を続けた。研究のビジョンについては日頃から考えを温めていたため、研究計画は比較的スムーズに執筆できた。むしろ苦心したのは「研究遂行力の自己分析」という項目。記述の適切な深さを見極めるのに苦労した。締め切り5時間前に申請書が完成し、指導教員の添削を経て、推薦書と共に大学事務局へ提出した。採択結果は翌月に通知されるとのこと。私は採択を祈りながら、次なる挑戦への準備を始めた。


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