こんにちは!札幌と筑波で電池材料研究をしている北大化学系大学院生かめ (D2)です。もともと人前で話すのが不得意な性格だったものの、練習やプレゼン技術の習得により苦手を克服し、全国学会にて学生講演賞を受賞するまでに成長しました1。
発表時間の大半を占める自身のプレゼンを上達させる方法は練習しかありません。練習すればするほどスムーズに発声できるようになり、大勢の観衆の前に立っても原稿が口をついて出るようになるでしょう。ただ、質疑応答はそう単純にいきません。いくらたくさん練習をしようとも、想定外の角度から質問を投げ込まれたらたちまち頭が真っ白になり上手く答えられなくなるはず。以前、思考の盲点を極限まで減らす質疑応答対策として『4W1H掘削法』を紹介しました。この手法を用いれば死角を大幅に減らせるものの、完璧な質疑応答対策をお求めの方には未だ十分とはいえません。
そこでこの記事では、プレゼン発表を成功させる「二種類」の質疑応答対策について解説します。
- 質疑応答対策の本質を掴みたい方
- ゼミでの炎上確率を少しでも抑えたい方
- 学会で最高の質疑応答を行い学会賞を受賞したい方
こうした方々にピッタリな内容なので、是非最後までご覧いただければ幸いです。
それでは早速始めましょう!
質疑応答対策には二種類ある
これまで研究室で四年間過ごしてみて、「質疑応答対策は一種類じゃないな」と薄々感じていました。具体的に言えば
- パターン①:未知の知識を既知の知識に変える訓練
- パターン②:既知の知識の理解度を高める訓練
これら2種類が存在するのではないかなぁ、と。我々が質疑応答に備えてせっせと用意していく際、上記2つをごちゃ混ぜにして対策を行いがち。良いんですよ。それはそれで構いません。自分がいまどのような種類の対策をしているかを自認できていればOK。ひょっとしたらパターン1に重点を置いてきた人の方が多いかもしれませんね。パターン2を見て『アンタ、何言ってんの?サヨナラ~』とブラウザを閉じてしまった方さえいらっしゃるかも。ぺージを閉じるのはあと1分だけ堪えてください。今からそれぞれの質疑応答対策パターンについて詳説していきますから。
パターン①:未知の知識を既知の知識に変える訓練
質疑応答セッションで最も困らせられるのが【知らない知識を問われる質問】。知らない分には答えられません。その質問を受けるまで、当該事項について聞いたことも考えたこともなかったのだもの。知らない知識を知ったかぶりしてペラペラと喋ったらどうなるか?傍で聞いている専門家から『それは違うんじゃないの?』『質問の意味、ちゃんと分かってます?』と厳しいツッコミが。自らが埋葬される墓穴を深く掘り下げ、その穴に閉じ込められてしまうのです。知らない質問には「知りません」と答えざるを得ません。でも、、、それって何だか悔しいですよね?
我々は少しでも知らない知識を減らすべく、発表前に入念な下調べを行う必要があります。どのような角度から質問が飛んできても大丈夫なよう、なるべく死角を減らそうと試みるわけです。発表に少しでも関係がありそうに思えた内容をネットで詳しく検索して頭に入れる。補助スライドだって作る。小難しい概念は口だけで説明するより、模式図を見せながら伝えた方が理解してもらいやすいから。未知の知識を既知の知識に変換してプレゼンに臨むのです。コレだけでプレゼンが上手く行く場合もあるけれども、成功確率を高めたいならもう一種類の対策も施しておかねばなりません。
パターン②:既知の知識の理解度を高める訓練
未知の知識を既知のものに変えるだけでは不十分。ジャブ的に打たれた質問を受け流せたとしても、『それってどういう意味?』と深掘りされたとき「えっと…」と立ち往生してしまいかねません。
知識はただ知っているだけではダメ。その知識をどれだけ『深く』理解しているかが重要なのです。要は知識の理解度を高めておく必要があるということ。知識の収集と知識の解像度が高ければ高いほど幅広い角度からの質問に耐えられるはず。質問の意図を把握した瞬間、返答に必要な知識を脳内の知識倉庫から必要な形で素早く引き出せます。その正確なること那須与一の射抜きの如く、早きことネズミを前にしたネコのグーパンチの如し。逆に、知識の理解度が低ければ想定通りの質問にしか答えられないでしょう。ある知識を別の角度から眺めれば答えられる簡単な質問でも、知識に応用を利かせられなければ「すみません、分かりません…」としか返答できません。
未知の知識を既知のものに変えられたならば、今度はそれの理解度を高め、自在に使いこなせるようにならなければなりません。いずれが欠けてもOUT。両輪が揃って初めて質疑御応答対策が完成します。
質疑応答対策は期分けをしよう
せっかく皆さんへ二種類の対策法についてお伝えしましたので、それぞれの対策法を用いる適切な時期についても解説していきます。
残り時間100%~20%:パターン①&パターン②の特訓
発表資料を作り終えたのち、質疑応答対策に取り掛かってから発表本番までの時間を全部で100とします。100のうち最初の80はパターン①とパターン②を順次進行させていって下さい。まずはパターン①。ネットや専門書で思いつく限り調べまくって未知の知識を既知のモノに変えましょう。次にパターン②。新しく仕入れた知識へ直ちに「コレってどういうことなんだろう?」「どうしてこうなるのだろう?」と疑問をぶつけて理解度を高めるのです。
対策効率を高めるには両パターンの順次進行が欠かせません。①を終えたらすぐに②へ、また①の作業を終えたら即座に②へ着手しましょう。とりあえず①を済ませてしまい、後から一気に②を片付ける順番でもOK。皆さんのやり易いようにやっていただく方が高い質疑応答対策効果を見込めるかと。後で②へ取り掛かる方に一点だけ注意。意識しないで知識を収集していると、いったい何が未知から既知になった知識かが不明瞭になってしまいます。新しく仕入れた知識をどこかにメモしておけば後で②へ取り掛かりやすいです。
残り時間20%~0%:パターン2のみの特訓
残り時間が20%を切ってきたらパターン①を終えましょう。直前まで新しい知識を仕入れたとしても、全く使い物にならない理解度の低い知識ばかりが集まるだけ。無駄な知識を頭に入れると思考回路のキレが落ちるのです。何か質問を投げかけられても、脳内の知識倉庫から知識を引き出す早さや正確さがガクンと落ちるイヤな感覚が。であれば、既に頭の中へ入っている知識の理解度を高めた方が得策。知識を深く知れば知るほど思考回路がより密に張り巡らされ、死角の減少、質問へのレスポンス速度の上昇など良い効果を見込めます。
【豆知識】質問の9割は既知の知識で返答可能
プレゼンの場で投げかけられる質問の9割は皆さんの持つ知識だけで十分回答可能。専門分野全般の基礎をきちんと学習してきた方は質問を過度に恐れずとも大丈夫。
仮に「んっ…?」と考え込まされる、言葉の詰まる質問をされたとしましょう。大丈夫、冷静になって下さい。落ち着いて考えてみれば何のことはありません。ごく簡単な事項について普通とは異なる角度から問われているに過ぎないでしょう。素面 (しらふ)ならちゃんと答えられます。どの角度から問われているか、質問に対してどのような知識を引き出せば答えられそうかを考えればOK。最悪、相手を自分の土俵に引きずり込めばいい。相手が繰り出す質問の角度を自分の専門領域にまでずらし、自らが自信を持って答えられる範囲内の知識で答えれば相手も納得せざるを得ない。
最後に
プレゼン発表を成功させるための二種類の質疑応答対策、およびそのやり方については以上。皆さんの質疑応答が成功して実りある成果を得られるよう祈念します。
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