20日:観光三昧
朝5時半から琵琶湖畔を90分ランニング。信号待ちがなく、直線と起伏の豊かな走りやすいコースだった。北大のコースよりも走りやすい。出張でたびたび訪れていた筑波よりもランニング環境としては上。伊吹山の頂から昇る朝日を眺めながらヤマトタケル伝説に思いを馳せる。あんな所で息絶えてしまったヤマトタケルの無念とその最期に胸を打たれた。考え事ばかりしていたせいか、いつの間にか知らない道を走っていた。帰路を見つけ出すまでに5km。ヤマトタケルのごとく遭難しかけるところだった。
東横インでは朝食を無料で食べられる。自分の食べたいものをブッフェ形式で好きなだけお腹に詰め込める。今回泊まったホテルの提供時間は06:30~09:00。朝早くから我々のご飯を作って下さって頭が上がらない。
今朝は08:30から食べ始めた。ちょっと早いお昼ご飯として利用させてもらう。自分は胃腸が弱くて一日二食しか食べない。朝食は抜き。昼・夜の二食生活。コレでこれまで八年間生きてきた。消化へエネルギーを使わないから午前中に眠くならず、朝飯前に仕事を次々と片付けられる。08:30からちょっと多めに摂っておく。夕飯を17:00ごろから食べ始めれば旅先でも難なく二食生活を維持できる。
ブッフェではツヤツヤな白米を二杯食べた。サバの味噌煮やだし巻き卵、きんぴらゴボウにソーセージ、それに草などもモグモグ味わう。いつもよりも一食目が早いせいか、あまりお腹へ食べ物が入っていかない。無理やり食べても気持ち悪くなるだけ。テキトーに切り上げて部屋に引き返す。
本日は京都観光するつもりだった。前夜に完璧な旅程を立てておいた。一応、私は国内旅行業務取扱管理者。国内旅行のプロを名乗れる国家資格の保有者。旅程管理業務ならばお茶の子さいさい。観光地の全体地図を頭に入れ、まとめサイトを物色して気になった場所を繋ぎ合わせるだけ。まずは伏見稲荷神社へ行く。次に晴明神社へ参詣。鴨川を渡って下鴨神社へ。それから宿敵・京大のキャンパス内を通って南下する。平安神宮と八坂神社へも寄る。最後に知恩院か清水寺で合掌。体力でゴリ押しするプランを立てた。脳筋男子博士大学院生、ここに極まれり。
奈良線で稲荷駅へ到着する。電車から大勢の観光客が吐き出された。旅行者が多すぎて改札でさばき切れていない。駅の外にも大行列ができていた。コレがオーバーツーリズムというヤツか。噂には聞いていたけれども、実際に見てみると酷いものだな。あまりの人の多さに吐き気がしてきた。人に酔った。コレはいけない。すぐに改札へと並ぶ行列から抜け出し、次に出発する列車が来るのを深呼吸しながらじっと待つ。残念ながら京都旅はまたのお楽しみ。午前十時にこの調子では、これから京都のどこへ行っても人だかりができているはず。
京都市内へ行く作戦が頓挫し、プラン変更を余儀なくされた。国内旅行業務取扱管理者としての技量が早速試される展開に。
北が駄目なら南に行ってやろう。さすがに奈良までは観光客も押し寄せていないはず。どうせ行くなら昔から行きたかった所がいい。奈良か、奈良…そうだ、石上神宮へ行こう。石上神宮には勝利の神様がいる。どんなピンチでも起死回生で巻き返す強烈なパワーを与えてくれるらしい。明日の学会や3日後のフルマラソン、今後の学位審査を乗り越えるパワーが欲しい。国宝の七支刀も見られたらいいな。歴史の教科書で見て以来、一度、実際に見てみたいなぁと思っていたから。
JR天理駅から徒歩30分。天理商店街や天理教総本山を抜けてたどり着いた。神宮境内は静謐そのもの。観光客の姿すらほとんど見かけない。やはり、観光するならこうした秘境に限る。マラソンまでもっと期間があったら三輪山にでも登ってみたんだけれどもな。
境内にはニワトリが放し飼いにされていた。彼らは神の使いである。特別研究員の私よりも序列は上。ニワトリ→大学教員→日本学術振興会特別研究員の順にえらい。ニワトリ様が順路を通過するのを敬礼しながら待つ。私の気持ちを察してくれたのか、一生懸命に首を前後へ振って猛スピードで道を開けてくれた。
神宮本殿からは不思議なパワーを感じた。二礼二拍手一礼して頭を上げると、まるで自分の頭ではないかのように思考がクリアになってきた。今なら何でもできる気がする。難しい研究や論文執筆を進めたり、ブログの新ネタを何十個も考えたりできる。ひょっとしたらバク転宙返りだってできるかも。出禁になるのだけはご勘弁を。ご利益に感謝して神宮を後にした。
続いて赴いたのは橿原神宮。日本皇室の父「神武天皇」が祭られている。諸説あるが、橿原神宮は日本最古の神社ともいわれているそう。一体どれほど厳かな場所なのか、見てみなくては神社マニアの名が廃る。
大鳥居に正対したとき、伊勢神宮の内宮を連想した。橿原神宮の大鳥居は、宇治橋の前に立っている大鳥居と雰囲気が瓜二つ。奥の方に強大な力を持つ神様がいらっしゃるのをヒシヒシと感じる。あまりの霊力に鳥肌が立ってきた。コレはすごい。もっと奥へ行ってみよう。
明治神宮ほどもある広大な敷地。これだけ広い場所の中にあっても正殿の存在感は途轍もない。恐ろしいまでの魔力を感じる。負の力ではない。純然たるプラスの力だ。神武天皇は絶対にこの中へいらっしゃる。日本の国運を創建者として見守り、心配し、裏で調節しているのだろう。二礼二拍手一礼して参拝。「これからも頑張ります」と誓って退出。
正殿の右には前皇后陛下の御歌が残されていた。皇統の開祖たる神武天皇へご挨拶に伺う際、砂利道を歩きながら悠久の歴史に思いを馳せたご様子が綴られている。日本はいま、皇紀2684年。あと16年でちょうど皇紀2700年になる。二千年以上も続く王朝など世界に日本だけしかない。これだけの歴史があるおかげで、日本の天皇陛下はアメリカ大統領より格上のエンペラーを扱いしてもらえる。これが日本にとってどれほどの財産になっているか。陛下の後継者不足が問題になって久しいけれども、旧皇族を皇室へ復活させてでも男系の血筋を引き継いでもらわねばならない。
帰りは近鉄特急で一気に京都へ。何時間もかけて進んできた道をわずか一時間で走破した。さすがに少し疲れてしまった。朝から19km走り、稲荷で人混みにもまれ、石上神宮へ往復60分歩き、最後は橿原神宮境内の砂利道を歩いたのだもの。一番きつかったのは人混みかな。アレがなければ特急へ課金せずとも急行で京都まで帰る気力が残っていたはず。車内では途中駅で降りそびれた乗客が車掌さんとの押し問答で大盛り上がり。最後ぐらいは静かに寛ぎたかったのだけれども、終点の一つ手前の駅までやかまし過ぎて休めなかった。
今日もコンビニ飯か…としょげ返っていたら、大津駅を出て右手30mの所に平和堂系列のスーパーを発見。コンビニ飯よりもスーパーの総菜や果物の方が旨いに決まっている。今日と明日の分の夕食を調達。本滞在中に飲み切られるだけの野菜ジュースやお米も買っておいた。二日ぶりの栄養満点な食事。美味すぎて昇天寸前だった。さっそく神宮参拝のご利益が顕れた形。明日の学会発表も首尾よく終えられたらいいな…
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