19~22日:学会発表その2
21日:日本学術振興会特別研究員としての公務(発表)
今日も5時半から90分のランニング。迷子にならずに完走できるよう、昨日と同じコースで練習を積んだ。身体の調子は絶好調。軽い出力で楽にスピードが出る。出張中にしては随分と調子がいい。昨夜、アボカドや柿など、栄養満点の食べ物を摂取したからだろう。明日はオフにして脚を休める。明後日の福知山マラソンを全力で走れる態勢を粛々と整えていく。
福知山で目指すは2時間40分切り。ここで終わりではない。今回の2時間40分切りを起点に、来シーズンは2時間30分切りに、ゆくゆくは2時間20分切りへと挑戦する。2時間40分ぐらい楽に切れなければ話にならない。何が何でも達成する。たとえ脚の筋肉がちぎれて歩けなくなったとしても。
このままでは何のために京都まで来たのか分からない。ランニングと観光をするための出張かと誤解されてしまう。本業にかまけて観光ばかりしていたら国家公務員失格。ちゃんと仕事をやらなくては給料泥棒になる。今日は自分の講演を行う日。魑魅魍魎のうごめく会場で研究成果を発表する。誰かに関心を持っていただければいいな。最後の学会。誰かと共同研究締結の約束を交わし、少しでも良い環境を作って研究室の後輩へバトンタッチしたい。
大津からJRで京都駅へ。京都から地下鉄烏丸線に乗り換える。駅北口のバス乗り場は観光客だらけ。人が多すぎてバスの数が足りていない。こんなにも多くの人々が京都市内へ散っていくのか。主要観光スポットはどこも大賑わいだろうな。日本らしい侘び寂びを楽しみたいと思って集まった観光客が侘び寂びの雰囲気を木っ端みじんに破壊する。何と皮肉な話だろうか。かといって彼らに「観光へ来るな」と伝えるのも酷な話なのだが。
烏丸線の北の終点・国際会館へ。長い地下道を歩いて会場の京都国際会館に到着。あまりの大きさに度肝を抜かれた。チャイナの函谷関ぐらい大きいのではないか。京大の寮生が攻め込んできても立て籠もって応戦できそう。ちょっとした城か要塞みたいな巨大な建築物だ。
会場内も迷路そのもの。受付を発見するまでに10分もかかった。プログラムを見て自分の講演会場を確認。その会場を見つけるのにも15分かかった。ホールが多すぎて訳が分からない。部屋の入口がみな似たような様相だから、四畳半神話大系のように同じ道をグルグルと無限に循環するような錯覚を味わった。
迷走中にたくさんの企業ブースを観られた。日本各地に点在する機械・化学メーカーが所狭しと商品を並べている。自分はこういう機械類が大好き。ジーっと眺めているだけで幸せになれる。配線がごちゃごちゃとしている装置が特に好み。複雑な装置には夢と希望が詰まっている。機械類はひょっとすればガッキーと同じぐらい好きかも。下宿の壁に貼っているガッキーの顔写真に飽きたら、今度は実験装置の写真を貼って癒されてみようかな。
発表一人前に次講演者の席へと座る。山口大の助教の方が講演するのをボーっと眺めた。助教の女性の話やスライドデザインが本当に上手で聴き入ってしまった。自分もいつかこういう素晴らしい発表が出来るようになりたい。結局、自分はD2になっても発表があまり上手にならぬまま。スライドには内容を盛り込みすぎる。いつも早口になって聴衆を置き去りにしてしまう。これらに対する自覚症状はある。問題の根本的な解決策を編み出せずに途方に暮れている。”コレぐらいなら大丈夫だろう”と目測を誤って発表で失敗する。自分に対して常に厳しい目を向けているつもりなのだけれどもまだ甘いらしい。せめて公聴会でぐらいは良い発表がしたい。D論を仕上げたら、一か月ぐらいかけてじっくりとプレゼンの勉強をしよう。研究室のプレゼンが上手なM2の後輩へ頭を下げてコツを聞いてみるのも一案。ほんの少しでも上手くなれるのなら何にだってすがりついてやる。
助教の講演を終え、自分の番が来た。HDMIケーブルをラップトップへとつなぎ、練習した通りに15分間、淡々と喋る。今回は今までで一番緊張しない学会だった。学生最後の発表だから、ココで講演を聴いて下さっている方々とまた会う可能性が限りなく低いからかもしれない。どれだけ失敗しても大丈夫。もう会わないならいくら恥をかいたって構わない。あるいは、緊張しないよう「聴衆はネコ🐈だ」と自身に言い聞かせたおかげかも。にゃんこ相手なら全く緊張しない。聴衆はネコ作戦、大成功。
残念ながら、質疑応答での聴衆のリアクションは芳しくなかった。聴衆が誰も挙手しなかったから座長が2つ質問して下さり、その後、慶応大の先生からのテクニカルな質問を2つ処理して終わった。自分は研究室配属以来、五年間、ずっと電池の基礎研究を行ってきた。ところが、今回講演を行ったのは応用研究サイドの学会である。この学会の聴衆は主に企業研究者。彼らは今日明日にでも役に立つ知見を得たくて集まった。私みたいな数十年先に役立つかもしれない知見など求めていないわけだ。役立たなさそうな研究に興味はない。リアクションが薄くて当然といえば当然。けれども、自分の発表スキルがもっと高ければ、聴衆の知的好奇心が刺激されて沢山の質問を誘えた可能性も。自分の前に発表した方ぐらい上手い発表ができれば、、、と本気で悔んだ。
落胆して会場を出た所、後ろから自分の名前を呼ぶ声が。パッと振り向くと、横浜国大の先生が笑顔で立っていた。「今回も面白い発表をありがとうございました^ ^」と言っていただけた。D1・9月に福岡で発表したときも「面白かったです!」と言って下さった先生だ。その場で少しだけ研究の話をした。早期修了して大学を離れると伝えた所、「後輩くんの発表も楽しみにしています^ ^」と言ってもらえた。自分の研究の面白さを自分以外の誰かが分かってくれているって幸せだ。まして、質疑応答でのリアクションがイマイチな後だからなおさら嬉しかった。これまで頑張ってきて良かった、のかな。良かったと思いたい。自分の五年間の研究生活に少しでも価値があると分かればそれだけで救われる。
講演後、指導教員と共同研究者さんの三人で今後の学位審査に関する打ち合わせ。最後の投稿論文に関するアドバイスを受け、予備審査用スライドの確認を入念にしていただいた。スライドにはかなり多くの指摘を受けた。今日の学会発表で得た気付きも踏まえ、大幅修正して再確認をお願いしたい。公聴会の日程も決まった。ファイナルラウンドは1/31 (金) の午後。調べてみたら一粒万倍日だった。最後にして最高の日取りを引き当てた形。学生生活の締めとして、またサラリーマン門出の日として相応しい。誰にも文句をつけられぬほどの圧倒的な発表を行いたい。年末年始は発表猛特訓だな。広島に帰っている場合じゃないかも。札幌に居残ってひたすら練習する。
夜、指導教員の指導教員から四条のうなぎ屋さんへ連れて行っていただいた。マラソンや予備審査前に滋養をつけるべく「ひつまぶし」を注文。外はパリパリ・中はフワフワな鰻には頬がボロッと落ちてしまいそうに。こんなに美味しい鰻はなかなか食べられない。飲み込むのが惜しく、ひとくち何十回も噛みしめてじっくり味わった。鰻まで食べさせて頂いたらもう頑張るしかない。マラソンでは2時間40分切り、予備審査や公聴会では完璧な準備を整えて発表しなくてはバチが当たる。
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