学振DC1を特別枠で申請して年間140万円の科研費を手に入れた方法

こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大化学系大学院生のかめ (D1)です。日本学術振興会特別研究員として給与と科研費をいただいています。

特別研究員になると年間最大100万円もの研究費を得られます。研究を円滑に進めるために研究費は絶対不可欠。実験系の研究員の場合、【特別枠】なるものを申請すれば科研費が最大50万円/年だけ増額。私の場合、MAX150万円の枠で140万円の科研費を3年間交付されることに⇩

その場観察技術による多成分系拡散現象の解明とリチウム電析機構の包括的研究 (KAKENHI-PROJECT-23KJ0054)

全員が全員、140万円を頂けているワケではないようです。特別枠で申請した大学院の同期は私と違って100万円の交付。私と同じ小区分で申請した知り合いも100万円のみの交付。 (どこで差が付いたのだろうなぁ)と一人でしばらく考えていました。

この記事では自身の考察を踏まえ、学振DC1を特別枠で申請して年間140万円の科研費を手に入れた方法を記します。

  • 特別枠で高額予算の獲得を目論んでいる方
  • 少しでも多くの科研費を取って研究生活を豊かにしたい方

こうした方々にピッタリな内容なのでぜひ最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

特別枠の申請書公開

特別枠の申請時に応募用紙に書いた内容を以下に示します。なお、このあと解説するポイントに関わってくる箇所には太字上付きの数字を付けてあります。

【400字制限】
本研究の観察対象は次世代蓄電池材料として最も有望視されているLi金属である。本研究によりLi電析現象の包括的な理解が得られれば、金属Li負極を用いた蓄電池実現に向けて大幅な前進が期待され、再生可能エネルギーを用いたスマートグリッド構築やカーボンニュートラル実現にも寄与するものと考えられる。本研究の遂行にはLiを用いた実験が不可欠であり、実験材料入手のため消耗品費が必要である。独自性の高い実験を行うべく、世界でケンブリッジ大学にしかないMRIの利用を計画しており、英国への往復渡航費が必要となる。その他、研究者としての競争力を養うのに不可欠な国内外での学会発表に伴う参加費や、得らえた研究成果を世に発信するための論文投稿に関わる費用が必要である。
本研究の原資である科研費は国民の税金が財源である。国民の皆様の期待に応えるべく利他の精神を持ち、高い国際競争力を持つ研究者になる事で本支援に応えたい。[400字ちょうど]

次に、特別枠で140万円獲得できた理由を考えてみます。

特別枠で140万円獲得できた理由の考察

140万円の予算獲得に成功した理由はおそらく下記の3つ⇩

  1. 国の重点投資分野『蓄電池材料』の研究を行っていたから
  2. 海外渡航を含みに入れたから
  3. 『差別化』に成功したから

以下で一つずつ解説します。

国の重点投資分野『蓄電池材料』の研究を行っていたから

日本は現在、国を挙げていくつかの科学技術分野に集中投資しています。半導体に永久磁石、人工知能に工作機ロボットなど、限られた分野に資源を集めて国の存亡を懸けもがいている[経済安全保障「重要物資」半導体など11分野、閣議決定 – 日本経済新聞 (nikkei.com)]。ムーンショット計画や選択と集中の是非をココで云々するつもりはない。重要なのは、私の専門・蓄電池材料研究が国の投資分野の一つだという点。選択と集中の”選択してもらえる側”ならたくさんのお金を頂けること請負。国の将来を担う研究者を育てる特別研究員制度において、国がわざわざ「重要です」と言っている分野の研究をしているのだからお金が回ってくるのも道理。私の場合、研究室配属時にあてがわれたテーマが偶然、蓄電池材料だったのが幸運。学振を見越してテーマを選んだわけではないので運が良かった形です。

実は申請時、特別枠でお金を貰えるか貰えないかはある意味、賭けだなぁと思っていました。というのも、蓄電池関連の研究費は学振以外からもたくさん公募がかかっているため、学振側から「別にウチがいっぱいお金を出さなくてもいいんじゃないの?」とマイナスに捉えられる可能性を危惧していたためです。実際、国研の共同研究者さんからも似たようなことを言われました。「もしかしたら貰えないかもねぇ…」と。心配が杞憂に終わって良かった^ ^ いくら他からもお金がもらえるからといって『必ずしも』貰えるとは限りませんから。

読者さんの中には

後輩のAさん

私のテーマ、重要投資分野と関係なさそうだなぁ…

とお考えになった方がいらっしゃるかも。大丈夫。今後はほぼすべての分野がテクノロジーと繋がってくるので、よく考えてみれば少々無理やりにでも投資分野との関わりを説明可能 (もし厳しそうなら手伝います)。

海外渡航を含みに入れたから

学振本体の申請書に加え、特別枠の応募でも【特別研究員任期期間中の海外渡航】を含みに入れました。”日本だけでは研究が完結しないから海外の大学でも研究をやらなきゃいけないんですぅ~”と。

海外挑戦する日本人研究者が最近、どんどん減っていっているようです。学振PDや海外学振の応募者を見ても右肩下がりの減少傾向に。まして博士課程の学生が海外渡航する例などかなり稀、滅多にいないらしい。そんな中で”渡航したい。渡航するのにお金が必要や!”と書けば「よし、分かった!」と若者のチャレンジを支援したくなるのが人情。特別枠の審査員は今のところ、全員が人間。何年後かにはAIに代替されそうだけれども今は人間。人は感情を持つ生き物です。いくら論理で動こうとしても最終的には感情で決める。ならば情に訴えかけるべき。お金が必要な理由を切実に述べ立てれば審査員の感情が動く

研究の世界、海外の学者と戦えなくてはお話にならない。研究力を高め続けなきゃ日本の学術界が丸ごと終わる。また、海外渡航は自分の国際競争力を高めるまたとないチャンス。自分にも日本の学術界の将来にも両方役立つのが海外渡航。特別枠での申請を考えている方は、博士在学中の海外渡航を少し考えてみて下さい。プラスの予算を獲得するのに強烈な後押しとなること間違いなしです♪

『差別化』に成功したから

何事においても自分と他人とを違わしめるには”意図して”『差別化』を目論むべき。自分の強みや弱み、性格や趣向を高解像度で詳細に理解し、どこを活かせば勝負に勝てるか?と考えに考えて違いを作り出す。

現代社会を俯瞰してみると、今だけカネだけ自分だけ (今カネ)な若者が多く見受けられます。私の属する研究室でも今カネな学生が多いですよ。考えや発言がちょっと卑し過ぎやしないか、と。短期的視野に基づき”もっとコスパの良い手段は無いものか?”と血眼になって探している。私の場合、そんな風潮に違和感を感じ、B1から部活やサークルなど学生の群れから距離を置き一人で活動してきました。ランニングにブログ執筆、年間100冊以上の文学作品の読書などで己を高めてきた過去があります。

純粋培養された私の心にはホンモノの利他の精神が根付いています。自分はいくら損してもいいから共同体全体にとってプラスになる活動がしたい、と。現代の若者とは正反対。だから大きな差別化ポイントになる。キレイごとになってしまわぬよう、申請書本編の方に【利他の精神が芽生えたエピソード】を記しておきました。念には念を入れ、特別枠申請書の方にも「科研費の財源は国民の税金である」とお金を大切に使う旨の意思表示をし、”嘘をついていないから安心してね”と提示・証明しておいたのです。とどめの一発に国民の皆様の期待に応えるべく利他の精神を持ち、高い国際競争力を持つ研究者になる事で本支援に応えたい』と記す。コレだけ書いたら十中八九、特別枠で追加の研究費を頂くことが可能です (*≧∀≦*)

最後に

学振DC1を特別枠で申請して年間140万円の科研費を手に入れた方法は以上になります。

申請書をテキトーに書いたら特別枠で研究費を手繰り寄せられません。私のように綿密に計算してようやく数十万円もの上積みが見込めるのです。皆さんの相手は皆さんと同じく、DC1 or DC2に内定を掴んだ日本中の強者たち。猛者たちの中で如何に自分を際立たせられるかが特別枠申請の成功の命運を握っているでしょう。

DC1に内定した申請書の研究計画以外の箇所を書いた記事も併せてご覧ください⇩

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