研究室生活で病まないためのマインドセット

M2の8月、私は抜け殻になりました。研究室に配属されてからずっと全力疾走を続けていたら、ある朝ぱたりと体が動かなくなったんです。布団から起き上がれない。パソコンを開く気力もない。未処理の実験データが山ほど溜まっているのに、指一本動かせませんでした。

あの朝、ようやく気づいたわけです。ペース配分を根本的に間違えていたのだと。

厄介なのは、一度壊れたメンタルがなかなか元に戻ってくれないところでして、あれから何ヶ月経ってもモチベーションを立て直せずにいます。だからこそ、同じ轍を踏む人が一人でも減るように、研究室生活を気持ちよく走り切るためのマインドセットをまとめておきます。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

燃え尽き症候群を防ぐ方法

燃え尽き症候群、本当に厄介です。何が厄介かって、燃え尽きる人はたいてい真面目なんですよね。

サボり癖のある人間が怠けているなら、尻を叩けば「はいはい、分かりましたよ」と渋々動き出してくれます。ところが、限界まで走り続けてガス欠を起こした真面目な人間は、尻を叩かれようが蹴り飛ばされようがピクリとも動けません。長期間なにもせず休む以外に回復手段がないんです。

経験者として言わせてもらうと、やる気を出したいのに体がまるで反応しない状態は、本当にもどかしいですよ。「動け、動いてくれ」と念じても、体は完全にストライキを起こしている。 同期はどんどん先に進んでいく。焦りが募って胃の底がぐるぐるして、吐き気まで込み上げてくる始末。

では、この地獄を回避するにはどうすればいいのか。答えはシンプルで、頑張らないことです

誤解しないでほしいのですが、怠けろと言いたいわけではありません。70〜80%くらいの出力で、楽に巡航してほしいんです。毎日100%、調子のいい日には120%を叩き出すような走り方をしていたら、そりゃいつかガソリンが尽きます。志がどれほど高くても、気力が回復するペースを超えて消耗し続ければ、エネルギー残量がゼロになるのは時間の問題でしょう。常に20〜30%の余裕度を残しておいてください

余裕があれば燃え尽きませんし、燃え尽きなければ研究が止まらない。一定のスピードでコツコツ実験を積み重ねていけば、2年、3年後には立派な成果として結実します。歩みが遅く感じても、止まらないことの方がずっと大事なんですよね。

私は趣味でランニングをやっているのですが、練習でも余裕度を大切にしています。レースに耐えうる脚は、長い時間をかけて、地道に走り込んで初めて手に入るものです。その過程でケガをして練習が中断したら元も子もないわけで、練習の継続性を担保するには腹八分目がちょうどいい。80%の力で走っていると、ケガのリスクを抑えながら、80%の出力で出せるスピードが自然と底上げされていくんですよ。

研究もまったく同じで、余裕を持って取り組めば中断リスクが下がるし、同じ労力でこなせる作業量も少しずつ増えていきます。燃え尽きず着実に成長するコツは、程々に手を抜くこと。真面目な人間ほど受け入れがたい処方箋ですが、これが一番効くんですよね。

後輩のAさん

自分の100%の力が分かりません!

ごもっともです。

キャパが分からないという方は、まずは一日だけ本気で作業してみてください。全力で追い込んだ一日はかなり疲れるはずです。でも、翌日からはその水準より20〜30%ほど楽をしていいと考えたら、なんだか長続きしそうな気がしませんか?

今後の研究室生活では、ほどよい力加減で楽に巡航してください。ダッシュなんて要らないし、ジョギングで構わないんですよ。学士も、修士も、博士課程も、ジョギングで駆け抜けられますから。

研究室生活で病まないためのメンタルとは

病まないためのメンタルと聞くと、鋼のように硬い精神力を想像する方がいるかもしれません。ところが、研究室では、メンタルが硬ければ硬いほど脆く砕け散ります

研究室生活には理不尽な流れ弾が定期便のように届きますし、論文の査読で容赦なくリジェクトを食らうことも、フェローシップの選考で祈られることもあります。そのたびに「もっと強くならなければ」と歯を食いしばっていたら、メンタルは確実に削れていって、いつか燃え尽き症候群のコースに合流してしまうでしょう。

何を言われてもサラッと受け流して、まるで意に介さない。辛いときは素直にヘコんでいい。でも次の朝にはケロッと切り替えて、憂鬱を持ち越さない。何度転んでも、転んだ勢いそのままにガバッと起き上がる。研究室で生き延びるために必要なのは、しなやかさなのです

しなやかさは、研究室に配属されてからでも十分に鍛えられます。練習として、身の回りの出来事をいちいち深く考えすぎないようにしてみてください。嫌なことがあっても「まあ、そういうこともあるか」とテキトーに流す。私みたいに繊細な人間にはこの「受け流す力」が足りていないので、意識的に訓練してみましょう。

実は、本当に最強なのは、殴られていることにすら気づかない鈍感な人なんですよね。急がず焦らず、どんな状況でもマイペースを貫き、飄々とラボで生き残っていく。あまりにマイペースすぎて周囲がイライラし始めるのですが、面白いことに、イライラした側の方が勝手にメンタルを消耗して自滅していくんですよね。鈍感力の持ち主は無意識のうちに周囲のHPを削っているわけです。すばらしい特殊能力でしょう。

残念ながら、鈍感さは訓練では身につきません。生まれ持った天賦の才だと思います。世間ではあまり評価されない性質ですが、研究室の戦場においては最高のパッシブスキルとして機能します。心当たりのある方は、どうかその才能を存分に活かしてください。

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