【アカデミア】大学と国研の違いや類似点は?五項目から比較してみた

こんにちは!札幌と筑波で電池材料研究をしている北大化学系大学院生かめ (D2)です。北大生のクセに偉そうながら、筑波の国研 (国立研究所)へ年に半年ほど入り浸って研究しています。

北大と国研との間を反復横跳びするにつれ、両者の違いをますます鮮明に理解できるようになってきました。この記事では、見聞きした情報を元に、大学と国研とを五項目から比較してみようと思います。

  • 博士修了後の進路を迷っていらっしゃる方
  • 今後国研への出張を控える大学生&大学院生の方

こうした方々にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

教育義務の有無:大学は有り。国研はほぼ無し

「大学は研究機関」と呼ばれますが、それと同時に教育機関でもあります。社会の穢れを何も知らない初心 (うぶ)な若者を四年間で傑物に育て上げるための場所。学生は一般教養や専門知識、人間関係の築き方などを学ぶ。図書館へ行けば四年間では到底読み切れない何百万冊もの蔵書から本を選べ、大学の裏手に行けば体を鍛えられる陸上競技場が設けられている。研究室配属と同時に各々の指導教員の元に付く。論文を書くために必要な専門知識や実験技能等を日々学んでいく… 先生を”指導”教員と呼ぶぐらいだから、先生方には学生の面倒を見る責任・義務があります。放置プレーを公言している私の指導教員のような先生もいるけれども、”指導”教員である限り、学生の指導からは決して逃れられません

国研は純粋な研究機関。教育義務はほとんどありません。大学と国研との共同研究を行う場合に限って大学から来た学生の面倒を見る必要が。大学側にも『メンツ』というモノがある。国研に対して恥ずかしくないよう、研究室の中から選りすぐりの精鋭を国研へ派遣しているのです。催促されなきゃ研究をしない学生ではなく、自ら進んで「オレ、こんな研究をやってみたいです!」と訴えてくる意欲的な学生が来ます。国研の研究者が学生に何やかやと世話を焼く場面はほとんどありません

研究と教育を両方したい方にとっては大学がオススメです。純粋に研究だけを突き詰めたい方にとっては国研の方がオススメ。

研究費の規模:大学<<国研

大学に交付される補助金の額は年間1~2%ずつ減っていっています。その分、競争的研究資金である科研費の総額は上昇傾向に。交付金なら自ら応募しなくても研究室の中で座っているだけで頂けていました。科研費は違います。申請書を書いて応募し、かつ厳しい競争を勝ち抜かなければ採択されません。科研費の採択率は全体の1~2割と言われています。3割当たれば超一流プレイヤー。まるでプロ野球選手のようですね。もしも研究費が枯渇した場合、研究室を一年間、研究資金ゼロで運営しなくてはなりません。流石にそれだと運営が回らないので、大学教員は交付金や科研費に頼らず、企業や財団を行脚して研究をアピールして研究資金の獲得に努めております。

国研の場合、研究予算が潤沢にあります。ドカドカ降り注がれる国の補助金を使用し、研究者はお金にあまり不自由することなく研究が可能。着任してすぐ、オープニングセレブレーションとして一千万円規模の研究費を与えられます(*大学の場合、着任時の研究費はゼロ)。大金を自由に使って研究環境を整えたり人を雇ったりできるのです。もちろん、科研費の申請も可能。当たらなかったら死活問題な大学教員とは異なり、最悪、当たらなくても大丈夫な国研の研究者のメンタルヘルスは良好。

研究費の問題に困らされたくない方は国研をお選びください。お金なんて自分で集められるぜ!という方は大学が宜しいかと。

研究設備:大学<<国研

大学や研究室によって事情はそれぞれ違うかと存じますが、一般に大学の設備は古く、新しいものがあまり導入されない傾向が。少なくとも北大はそう。”いったい何十年前に導入されたの?”と驚くほどオンボロな格式のある装置を使っていらっしゃる。古いのがいけないというワケではありません。古くても大事に使えば長持ちするし、古い装置だって工夫したりカスタマイズしたりすれば良好なデータを得られるのですから。『新しい設備を導入するお金が無い』というのが致命的欠陥。お金が無いから装置を更新できない。お金が無いからタイルの剥げた建物の修繕も不可能。旧帝大の一角たる我らが北大さえこうした悲惨な状況なのです。他の地方大学はもっと大変な状況なのではないでしょうか?

国研には毎年次々と実験装置が導入されていきます。世界最高の測定精度を持つ顕微鏡や分光器が所狭しと並んでいるのです。研究者数の増えるスピードよりも装置の増えるスピードの方が速いんじゃないかと思うほど。一体どこにそれほどたくさんのお金が余っているのでしょう… ねぇねぇ、ちょっと私に分けてくれませんか^ ^?えっ、ダメ?…まぁ、そうですよね。研究所の外装や内装、各実験室の中まで非常に綺麗。北大へ帰るたびに北大がゴミ屋敷少し荒んで見えてしまって困ります。

恵まれた研究環境のもと働きたい方には国研がオススメ。環境なんかどうでもいい、研究さえ出来ればいい!という方は大学がオススメ。

給与:大学≒国研

国立大学と国研の研究者の基本給はほぼ同じぐらい。もちろん階層によってバラバラですが、同じぐらいの階層の研究者が貰っている給与は似たり寄ったりということ。具体的には、

  • 【500~700万円】大学助教|研究員
  • 【800~1000万円】大学准教授|主任/主幹研究員
  • 【1100~1300万円】大学教授|グループ長

このような形になります。個人的には研究者さんの給与はもう少し高くても良いのではないかなぁ、と。狂っているほど忙しい日々を耐え抜いた末にこれぐらいの給与ではあまりにも寂しい。研究者になりたがる人が少ないのって、研究者になった後の給与が少ないのも一因なんですよ。研究者になれば年俸一億近く貰えるのなら、我々学生はみな血眼になって研究者になるべく研究すると思います。

なお噂によると、私立大学の教員はもう少し多く貰っているそうです。国立大学の先生方より各教員に配属される学生数が倍近くいるから当然、といえば当然かも。

昇進難度:大学≒国研

昇進の難度も大学と国研とで同等。十分な成果を出し、かつ上のポジションが空けば上の階層に昇進できる仕組み。努力が必ず報われるわけではないという点がアカデミアの難しい所。どれほど頑張って研究をやったって上が詰まっていたら昇任されませんから。昇任されなければ給与が跳ね上がりません。もっと多くの給与が欲しい!とお思いになった方から脱アカデミアしていきます。

そもそも、大学教員や国研の研究員になるまでが大変な難関。博士修了後、直ちに助教や研究員になれる方はごくごく少数。大半の方はまず数年間、博士研究員 (いわゆるポスドク)になる必要が。世界中を流浪して業績を積み上げ、他の人との競争に勝ち、かつ大学や国研に空きポジションがなければ採用されません。民間企業へ就職するよりもアカデミアで正規職にありつく方が何倍も難しいです。私自身、国研の正規職になりたかったものの、なれそうな見込みを立てられなかったので企業へ就職した次第。

最後に

大学と国研の違いや類似点については以上。進路選びに迷う皆さんの参考になれば幸いです。

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