【博士課程】日本学術振興会特別研究員DC1になるメリットとデメリット

学振DC1に内定し、特別研究員として活動を始めてからおよそ一年が経過しました。

この記事では、ここまでの一年で得た実感をもとに、学振特別研究員になるメリットとデメリットをお伝えしていきます。博士進学を考えている方や、学振DCに興味がある方にぴったりな内容になっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

学振DC1とは?

まず、学振DC1について簡単に解説しておきます。

学振DC1とは、博士課程に進学する学生が国からお金をもらえる仕組みのこと。給与は額面で月20万円、研究費はだいたい年100万円。これらをD1からD3までの3年間にわたって受給し続けられます。

学振DC1になるためには、博士進学する前年度、大半の方にとってはM2の5月に申請書を提出し、申請者間で繰り広げられる激しい競争を勝ち抜いて内定を勝ち取る必要があります。内定倍率は6倍前後。採否は申請から数か月後、私の場合は9月に明らかになりました。

学振DCについてさらに詳しく知りたい方は、別途まとめた記事もありますので、そちらをご覧ください。

ここから先は、学振DC1になるメリットを3つ、その後にデメリットを4つ、それぞれ解説していきます。

学振DC1になるメリット

給与と研究費を貰える!国際学会や長期留学にも行ける♪

D進を志す学生にとって、お金の問題は文字通り死活問題です。大学院生活を営むにあたって、学費、生活費、その他もろもろのお金がどうしても必要になりますから。

学振DC1に内定すれば、お金まわりの懸念点を一挙に払拭できます。月20万円の給与は、やはりデカいですよ。よほど贅沢しない限り、健康で文化的な、まあまあ苦しくない生活が送れます。給与をもらえるおかげで、D進せず就職した同期に対しても劣等感を味わわずに済みました。自分だって国からお金をもらっているサラリーマンなのだから、お給料を貰っている同期と立場は変わりません… よね?

仮に奨学金で生計を立てるとなれば、大きな劣等感、いや焦燥感に苛まれていたはず。DC1になれば、懐にも心にもゆとりを持って暮らせるのです。

ちなみに我らが北大の場合、学振DC1の私は、授業料の支払いを全額免除にしていただきました。そこそこ幸せな生活を送らせてもらえて、国と大学には感謝しかありません。

学振DC1になると、自分の裁量で自由に使える研究費も得られます。通常は100万円が3年分。私の場合は運に恵まれて、140万円を3年分使える枠をいただけました。これだけのお金を自由に動かせると、院生のうちに海外へ渡航できるようになるんですよね。

アメリカやヨーロッパの国際学会に参加するのはもちろん、海外の大学や研究所への半年程度の滞在さえ可能になります。私自身、D1の10月から12月まで英国のオックスフォード大学へ研究留学しました。海外でしか味わえない、面白い経験から手痛い経験まで、たっぷり積ませてもらえてハッピーです。

『同世代最上位層』の称号と自信を得られる

先ほど述べた通り、学振DC1の採用倍率は6倍前後。4,000人近い応募者のなかから、約700人が内定枠を勝ち取ります。6人に1人しか通らない世界です。しかも競争相手は、わざわざ茨の道のD進を志すほどのド変態猛者ばかり。

そもそも申請に漕ぎつけるだけでも骨が折れます。研究計画、自己分析、推薦書と多項目に及ぶ申請書類を漏れなく書き上げ、審査員にアピールできるだけの研究業績を積み重ねなければなりません。提出作業もまたひと苦労で、省庁のもはや「要」項とは言えない要項と、申請フォームを誤らず解釈したうえで提出にこぎつけることになります。

DC1は紛れもない難関資格です。内定すれば、同世代最上位層の称号がもれなく付いてきます。

通りすがりの猫に「ワシは日本学術振興会特別研究員DC1だぞっ」と早口で告げてみてください。マジで!! と顔から眼が飛び出さんばかりに瞼をひん剥いて驚き、平身低頭でひれ伏してくれることでしょう。一度試してみてほしいです。私は北大の野良猫に激しく威嚇され、あまりの恐怖に逃げ出しました。

冗談はさておき、激しい競争を勝ち抜いて手にした称号からは、確かな自信が得られます。内定は審査員から研究力を認めてもらえた、何よりの証だからです。仮に博士課程で研究が進まない辛い局面にぶち当たったとしても、自信さえあれば多少の難局は軽々と乗り越えていけます。

後輩から尊敬される

それまで前述の野良猫よろしく「先輩笑」となめ腐った態度で呼んできた後輩も、私がDC1になって以降は少しだけ態度を改めてくれるようになりました。どうやら私を見直したようです。DC1か、アイツもなかなかやるな、と多少は尊敬してくれたのでしょう。後輩らは私の指示や助言を素直に聞くようになりました。どれだけ単純なのでしょうか。称号にひれ伏すあたり、意外と可愛いところもあるじゃないですか。

DC1内定以降、何らかの公募に申請しようとしている後輩が、私を頼ってくるようにもなりました。申請書を見てくださいとか、この表現で意味が通じますかね、といった具合にアドバイスを求めてくるのです。そう、学振に内定すれば、ラボの中で学振おじさんとしてふんぞり返れるわけです。ここぞとばかりに偉そうな顔で、ココはこうしてみたらいいんじゃないの、なんて指摘します。きっと、ウザい先輩だなぁ、と陰で悪口を言われているのでしょうね。

学振DC1になるデメリット

ここからはデメリットを4つ取り上げていきます。

学振DC1になる前に、学士と修士課程がしんどい

私が学振DC1を目指し始めたのは、M1の前期から。指導教員の方針にしたがって、B4の頃からハイペースで論文を出していました。論文に載せるためのデータを全速力でかき集める日々で、揃い終えて一息ついたのも束の間、次の論文を仕上げるために再び走り出す繰り返しでした。

正直、めちゃくちゃしんどかった。もう少しゆっくり研究させてほしかったです。

業績を血眼になって積み上げなければDC1になれない、と頭では理解していました。とはいえ、M1の頃から業績、業績、と鼻息を荒くし続けなければならず、心身ともにクタクタになりました。M2後期からD1前期にかけて、学振の燃え尽き症候群に苛まれたほどです。何事も頑張りすぎは禁物ですね。

これからDC1内定を目指す方は、自分の体力と相談しながら、十分にお気をつけください。

JASSOの奨学金を受給できない

修士課程で借りていたJASSOの奨学金は、本来であれば博士課程でも引き続き借りられます。第一種奨学金なら月々13万円、返済全額免除になったとすれば3年で468万円もの大金になります。

ところが、学振DCになると博士課程ではJASSOの奨学金を受給できません。要は併給ができないということです。JASSOと学振DCの、どちらか一方を選ばねばならないのです。

学振と雇用関係がないのに給与所得という謎

DC1になると、税制上の少しあやふやな領域に足を突っ込むことになります。

学振DCとしていただける給与は、給与所得というカテゴリーに分類されます。給与所得は、会社などと雇用関係にある場合の所得を指します。フリーランスの人間が受け取る報酬は雑所得と呼ばれ、給与所得と雑所得は名称も税率もまるで異なるのです。

そして、学振特別研究員に雇用主はいないとされています。雇用主がいない以上、DC1がもらえるのは雑所得のはずなのですが、我々が受け取るのは給与所得。果たして、我々の雇用主とは、いったい誰なのでしょうか

健康保険の話も似たような構図です。雇用主のいるサラリーマンや公務員の場合は健康保険に入れ、雇用主のいないフリーランスは国民健康保険に加入することになります。

我々学振DC1はといいますと、なんと、国保への加入となるのです。今まで親の扶養に入っていた方も国保へ加入せねばなりません。雇用主がいないから国保へ加入するというのは、まだ何となく理解できます。とはいえ、ならばどうして所得だけが給与所得扱いなのか、ますます謎は深まるばかりですね。

ちなみに、給与所得よりも雑所得のほうが税額を抑えやすい傾向にあります。所得が雑所得扱いの場合、青色申告で確定申告すれば、見かけの所得額、つまり税金が付加されるお金を大きく下げられるからです。JSTのフェローシップなどは所得が雑所得扱いだそうで。自分で確定申告する手間はかかるものの、支払う税額を抑えられるなら、みんな喜んで手続きしますよね。羨ましい。

なぜ学振DCだけがいまだ歪んだままなのか、本当に意味がわかりません。一刻も早く学振DCも雑所得扱いになりますように、とお祈りしておきましょう。

苦労して採用されても、大学関係者以外には凄さが伝わらない

悲しいかな、学振DC1の存在は世の中にあまねく知れ渡っているわけではありません。大学院生や大学院修了者の間でしか、知名度が無いのです。

私自身、学振DC1という言葉を初めて耳にしたのはB2後期でした。大学の講義中、とある教員の雑談に偶然出てきたのが最初の出会いでした。大学院生でもそれくらいなのですから、大学院と縁もゆかりもない一般の方が知っているはずもありません。北大の猫でさえ知らないモノを、大衆が知っているわけがないのです。

したがって、どれだけ苦労してDC1内定を掴み取ったとしても、社会的には報われません。日本学術振興会特別研究員DC1だぞっ、とドヤ顔を決めても、「は、何それ?」と会話が噛み合わない。せっかくの称号も、披露する場所を選ぶというわけです。

最後に

学振DC1になって得られたメリットとデメリットについては、ここまででひととおり書き尽くしました。博士進学を志す方や、学振DC1に興味を持っている方の参考になれば嬉しいです。

しんどい時期を経て手にした特別研究員という肩書きは、決して華々しくはないけれど、確かに自分の研究生活を支える土台になってくれています。デメリットも諸々ありはしますが、それを差し引いてもなお、挑戦する価値のある制度だと一年経ったいまも感じている次第です。

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