12/30 全体の行程
- 0615-0720 イスタンブール空港→カドゥキョイ (イスタンブールのアジア側地区)
- ボスポラス海峡をフェリーで横断
- ヨーロッパ地区を観光
- 海峡をフェリーで横断
- ホステルまで地下鉄で移動
空港バスでアジア側へ
朝4時、ベンチの上で起床。目覚まし時計は女性の泣き声。私の寝ていたベンチの後ろに座るや否や、耳にスマホを当てて号泣し始め”なんだなんだ?!”と驚いて起きた。何を言っているのか分からない。トルコ語?アラビア語?一体どうして嘆いていたのだろう。トルコは非英語圏。文字こそアルファベットを使うが、単語や分法はまるで英語と異なるから全く分からない。一応文法は日本語と同じくSOV [主語→目的語→述語]の順番らしい。だからといってすんなり理解できるワケじゃないのが語学の難しい所。
ベンチの横にあるATMでトルコリラ (TL)を引き出しておく。トルコはキャッシュレスがあまり浸透していないらしく、屋台やレストランを始め、カード払いを受け付けていない場所が数多く存在するらしい。日本やイギリスとは大違い。とくにイギリスなんかはキャッシュ払いを受け付けていない場所さえ見受けられるのに。こうした文化の違いを味わえるのが複数国旅行の醍醐味の一つ。”不便だなぁ…”と嘆くのでなく不便さをも楽しんでやろう。とりあえず300TL (1,500円)引き出しておく。手数料は3%ほど。定額ではなく定率なんだな。
空港の到着ロビーを抜けて外のバス乗り場へと向かった。意外と寒い。吐息が白く、油断していたら風邪をひいてしまいかねない。ベンチに座って30分待つ。電子書籍を読んで暇つぶし。スマホは諸事情により開かなかった。理由については後ほど話す。
ベンチの前を眺めていると少し妙な違和感を覚えた。何なんだろう…?あぁ、車が右側を走っているからだ。日本やこれまで留学していたイギリスでは左側通行だった。ロンドンから飛行機に乗り、イスタンブールに着いた途端、世界がすっかり逆転していて頭が順応していなかった。今後、道路を横断する際には普段と真逆の方向を確認しなければ。注意しないと轢かれてしまう。こんな所では死にたくはない。
とりとめもなく思索に耽っているとバスがやってきた。運賃149TLを払うべく、先ほど引き出したキャッシュを右手に持った。運転手さんに渡した所、「クレジットカードの方が嬉しいんだけどなぁ…」と言われた。なんだ、カード払いも出来るんじゃないか。「じゃあカードで払うわ!」とVisaで支払い。後方座席に乗り込み、腰を下ろす。乗客は10名。乗車率は15%ほど。リクライニングシートを限界まで倒して終点まで目を瞑って寝た。
ボスポラス海峡を横断
運転手さんの大声のアナウンスで目を覚ました。どうやら終点に着いたようだ。重たく閉じた瞼を開け、顔をこすって荷物を担ぐ。外に出てみてさぁ、困った。降ろされた場所がどこだか皆目見当を付けられない。というのも私、トルコでネットを使えるSIMカードを持っていないのだ。ブルガリアやギリシャ以西ではネットに接続可能なものの、手持ちのSIMではトルコでネットに接続しようとしても圏外になる。
実は私、今後13週間の旅行でSIMカードを使わず生きて行こうと考えている。安易にネットに頼るより、五感を最大限まで使い、研ぎ澄まして、進むべき方向を自らの感覚で見定めたほうが良いだろうと考えたワケだ。手持ちのSIMカードも使わずに行くつもり。ユーレイルパスはQRコードの画面だけスクショしておけばOK。公共施設のWi-Fiを使えばそこまで悲惨な事態にはならぬだろう。現在地だけはネットが無くても地図アプリで常時確認可能。ネットに接続できない以上、スマホを開いて時間つぶしをするのはほとんど不可能だ。ゲームは何ら入っていない。電子書籍を読むか、ボーっと空を見つめているしかない。
幸い、降車地点にもWi-Fiスポットがあった。早速接続して何か情報を得ようと試みる。…ん?接続するとお金を取られるらしい。それはまだ良いのだが、接続するには電話番号を登録し、Wi-Fiサービス会社からSMSを受け取る必要があるようだ。ネットや電話が使えないからWi-Fiに頼ろうとしているにも関わらず、Wi-Fiへ接続するためにはSIMでネットに接続せねばならぬよう。…無理やないか笑。こんなの禅問答やん。トルコでWi-Fiに接続するのはどうやら諦めねばならぬらしい。まぁ、いいわ。何とかなるだろう。
バス停から少し歩くと灯りのついたフェリー乗り場が見えてみた。とりあえずフェリーに乗ってみようか。どこへ着くのかサッパリ分からぬが乗れば事態は動き出すはず。
乗船賃を払うためには『イスタンブールカード』なるモノが必要。イスタンブールカードは日本のICOCAとほとんど同じようなもの。当カードがあればイスタンブールのほぼ全ての交通機関に乗られる。船や電車、地下鉄にバスなど選り取り見取りという形。公衆トイレの入場料も払える。トイレは一回1TL (5円)や2TL (10円)。数十円程度取られるロンドンやエディンバラより遥かに安い。イスタンブールカードを使ってスーパーで買い物を済ませられたらいいのだが不可能。便利なようで不便である。ICOCAの方が優れている。非在住者用のカードは5日分で1200TL (6,000円)ほど。高いが、1200TL払えば5日間乗り放題らしいから”絶対元を取ってやるぞ!”と心に決めて購入を決断。
券売機に向かうと、右横に大きな野犬が横たわっていた。「うわっ!」と思わず横っ飛び。噛まれたら堪ったもんじゃない。犬はピクリとも動く様子が無い。よく見ると、犬の耳たぶには数字とアルファベットの書かれたコードが付いてあった。ひょっとしてこの子たちは政府公認の寝そべり犬なのか?ならば過度に怖れる必要はなかろう。犬が目覚めて襲って来る前にササっとカードを買ってしまった。ちなみにイスタンブールカードもクレジットカードで購入できた。”現金しか使えない”とはいったい何の話だったのか。
舟の中は暗くて落ち着いた雰囲気。椅子はフカフカ。破れはない。いつまでも座っていられそうなほど安心感のある船内だった。
出航するとすぐボスポラス海峡を横断。遠ざかるアジア側の建物の灯りが異国情緒を醸し出す。30分揺られて対岸に着いた。さぁ、いよいよ観光開始だ!
アヤ・ソフィア
…とはいっても、果たしてどこから観光すればいいやら全く分からない。知っている見所といったらガラタ橋とアヤ・ソフィアぐらいしかなかった。そして困ったことに、ネットに接続できない以上、それらがイスタンブールの何処にあるのかさえも調べられなかった。左右をキョロキョロ見渡し、視界に入ったガラタ橋っぽい橋に上る。
橋の上から南を向くと、朝日に照らされるモスクが見えた。大きいな。そしてなんと素敵な建物なんだ。YouTubeで見るのと実際に見るのとではオーラや迫力がまるで異なる。…凄い。鳥肌が立つほどの畏怖の念を覚えた。橋の欄干に大勢の人が釣竿を持ってもたれかかっていた。釣り人のバケツを覗くと、どの人もたくさんの収穫があるよう。獲りすぎて魚が居なくならないのかなぁ…と気がかりに。釣り糸同士も絡み合いそうで (大丈夫なのか?)とさらに心配に。
橋の上から見えた大きなモスクを次なる目的地に掲げる。斜度20%はあろうかというほどの坂を上って向かうも、着いて見上げてみると地元民向けのこじんまりとしたモスクだった。さて、これからどうしようか。ちょうどその時、後ろから日本人観光客の集団が私を追い抜いた。彼らの手にしていた地図を鷹の目を使って読ませていただく。目玉スポット『アヤ・ソフィア』までの方角とおおよその距離を把握した。路面電車を使って向かう。徒歩で案外近くまで来られていたらしく、2駅乗っただけであっという間に所望の場所へ到着した。
果たしてどれほどの大きさがあるのか… 想像していた3倍も大きなモスクには思わず口をあんぐり。荘厳な歴史の重みを感じさせながら、どこか女性的な美しさや奥ゆかしさをも感じられる。コレは入ってみたいなぁ。周囲を見渡すと行列があった。地の果てまで続く長い行列に”さすがに待っていられないわ”と断念。私は待つのが本当に苦手。何かをするため一時間も二時間も待たされたら気が狂って倒れてしまう。
アヤ・ソフィアの反対側にはブルー・モスクが佇んでいた。こちらは男性的なカッチリとした印象。ブルー・モスクの前には行列が皆無。無料で入れるらしいが、背負っているリュックがあまりに重たくて動き回るのが嫌だったので後日入場することに。
路面電車でさらに進む。立派な門が見え、気になったので下車して近くまで眺めてきた。どうやらコチラの白亜の門はイスタンブール大学の正門らしい。こんなに立派な正門を抱える大学って他に果たしてあるのだろうか?我が北大の小さくてボロボロな正門と比較すると悲しくなってくる。ダメだダメだ、比べちゃダメだ。北大には北大なりの良さがあるのだし、隣の芝を羨んでも無駄だ。
近くの広場のベンチに腰を下ろす。ふーっと一息つくと、左横から黒猫が乗っかってきた。ちょっと、重いんですけど。なに勝手に乗っているんですか?人間の子供が同じ行為をしてきたら全力で叩き落とすよ。猫だから許してあげるけれども。にしても重いな。早く降りてくれよ。
勝手に乗っかっておいてどうして睨んで来るんだよ笑。えっ、肖像権?あぁ… まぁ、猫には肖像権は無いだろう。念のため許諾を得ておこうか。写真、撮ってもいいですか?「いいにゃ♪」そうかそうか。ありがとなぁ。背中をなでても顔をさすっても全く嫌がる様子を見せない。にしても本当に人懐っこいなぁ。日本のラボに持って帰りたいぐらいだ。ちなみにイスタンブールにはそこかしこに野良猫がうろついたり鎮座していたりする。可愛いったらありゃしない。見るだけで思わず笑顔になってしまう。
トルコといったらサバサンド
動いてお腹が空いてきた。どこかで昼飯を食べることに。トルコといったらサバサンド。サバサンドを食べずにトルコを後にするなど決してあってはならぬ。まして、私は大学一年次から大学院博士一年次の9月末まで6年半もの間、毎日サバ缶とイワシ缶を飽きずに食べ続けてきたのだ。青魚大好き人間たる私がサバサンドを食べずに済ましてはダメだろう。
屋台で念願のサバサンドを購入。価格は100TL。値切ろうかと思ったが、円高・リラ安の昨今の情勢を踏まえて遠慮しておいた。大きなパンにはさまれた黄金色の焼きサバが海と太陽に映える。味も最高。パンとサバって意外と相性が良いかもしれない。よく噛んで食べたら一個でお腹がいっぱいになった。美味しかったなぁ。もしかしたらトルコ滞在中、もう一度食べに行くかもしれない。そういえば、サバサンドのサバってどこで獲ってきたのだろう?もしかして橋の上から釣ったのかな笑?橋で釣り、橋の下の屋台で売ってお金を稼いで釣り用の餌を買う。永久機関の完成じゃないか…!熱力学の第一法則が木っ端みじんに砕け散る音がした。
ホテルはどこだ?
フェリーに乗って対岸に戻る。地下鉄に乗ってホテルの最寄り駅へ。地下鉄は清掃が行き届いている。ロンドンの地下鉄より何倍も綺麗。車高は十分。開放感がある。アクリル製の椅子はちと硬いかな。座ると加減速時にお尻が滑って隣の乗客にぶつかりそうになる。
地図アプリを起動し、現在地を確かめながら予約したホテルを目指す。歩道橋を渡るとそこには片側6車線もの大きな車道が。こんなに広くて大きな車道は今まで見たことが無いかもしれない。しかも渋滞しているじゃないか。流石、一千万人都市なだけはある。いや~、凄いわ。活気があふれ返っている。
ふらふら歩いてホテルの前らしき所に着いた。だが、肝心のホテルが無い。さては住所を調べ間違えちゃったのか…?野宿は勘弁。二日連続でやると腰が不可逆的におかしくなってしまう。”どこだどこだ”と上を見上げるとホテルの看板が目に入った。どうやら今回の宿はとあるビルのワンフロアにあるらしい。もしも夜にホテルの前へ着いたらホテルを見つけられなかっただろう。あぁ、良かった。昼に着いておいて。今後、ホテルや交通機関を選ぶときは昼間に着けるよう調整しなくちゃいけない。
宿の中は綺麗だった。オシャレな家具やキッチン、そしてベッドに大満足である。一泊2,500円ほど。4泊5日、朝食抜きで1万円程度の宿泊費。
買い物&晩御飯
ホテルの1Fにあったスーパー『BIM』でお買い物。パンにハム、そしてチーズ、さらに飲料水を買い込む。お値段、たったの60TL (300円)!いや~、トルコの物価は安くて助かる^ ^。イギリスで同じ品々を買って会計すれば軽く1,000円は超えてくる。トルコは長期滞在にうってつけの国。驚異的なリラ安に下支えさえて僅かな出費で済ませられた。
1時間ほどデスクワーク。ブログのネタを整理したり、大学院で取り組む研究の論文の骨子を組み立てたりした。お腹が空いてきたので夕食。パンにハムとチーズを挟んで簡易サンドイッチを作成。食事なんてこんなもので良い。カロリーさえ取れりゃ十分だ。少しは栄養も摂りたいけれども… 滋養たっぷりなものが買えないか、明日以降、スーパーで物色してみよう。
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