研究室生活春夏秋冬vol.9 B4・11月 突然回ってきた論文執筆のチャンス

予期せぬ転機

ある日、つくばで得たデータの整理に没頭していた私のもとに、思いがけない来訪者があった。指導教員が「ちょっと話がある」と声をかけてきたのだ。何か不手際があったのかと心配しながら先生の居室へ向かうと、厳かな雰囲気で着席を促された。

緊張で固まる私に、先生は突然満面の笑みを浮かべ「ねぇねぇ、論文書いてみる気ない?」と声をかけてきた。予想外の展開に戸惑いながらも、私は居酒屋店員さながらの「はい、喜んで!」と即答。先生は「マジで!いいの?!」と、まるで友人との会話のような発想の声をあげた。

きっかけは、ある海外雑誌が4ヶ月後に発行する特集号。このタイミングでの投稿なら、アクセプトの可能性が高いという。千載一遇のチャンスを逃すまいと、2週間後から3週間の新たなつくば出張が決定した。

つくばでの激闘

今回の滞在は波乱の連続だった。第一週目から順調にデータが集まり始め、第二週目には指導教員からも太鼓判を押されるほどの成果を上げた。しかし、第三週目の水曜日、思いもよらぬ事態が発生。それまでに集めた全データが使用不可能であることが判明したのだ。実験セルの作製方法のミスと、理論値の計算方法の誤りが重なり、誤った実験値と理論値が偶然一致していたという皮肉な結果だった。

残り僅か2日半。論文投稿の機会を逃すまいと、諦めることを拒否した。自分の名を世界に残したいという野心が、疲れた体を奮い立たせた。新しい実験セル作製法と修正した理論計算で、怒涛の実験が始まった。滞在時間ギリギリまで実験を続け、ようやく必要なデータをすべて揃えることができた。

最後の力を振り絞っての成功に、深い安堵感が全身を包んだ。締めくくりに口にしたラーメンの味は、この上ない達成感とともに舌の上に広がった。正確な実験方法に最後になって気づいた悔しさはあるものの、この激闘を通じて研究者としての第一歩を踏み出せたような気がした。論文執筆という新たな挑戦への期待が、疲れ切った心を静かに温めていた。

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