電気化学勉強用専門書フローチャート 大学院修士課程編

こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (D1)です。学部4年次 (B4)の4月に研究室へ配属され、今年で電気化学研究歴が4年目となりました。私が在籍した学士&修士課程では電気化学の講義が2個しか設けられていませんでした。そのため、研究に必要な知識はほぼ全て独学で習得した次第であります。

この記事では、私の過去の経験を踏まえ、電気化学系研究室に配属されたM1・M2が電気化学の勉強をする際に役立つ参考書を5種類紹介していきます。以前公開した学部生編と同じくフローチャート形式での紹介となります。

  • 研究だけではなく勉強も頑張りたい院生さん
  • 学部生のうちに大学院生レベルの知識をつけたい意欲的な学部生さん

こうした方々にピッタリな内容なのでぜひ最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

電気化学勉強用専門書フローチャート 大学院修士課程編

本記事でご紹介する専門書とそれらの勉強順は以下の通りです⇩

それぞれの専門書について一つずつ解説します。

詳細

電子移動の化学:院生の期間中ずっと

電気化学の教科書として、過去の記事で学部生向けに『基礎化学コース 電気化学 (丸善出版)』をオススメしました。この本は少々難易度が高く、学部生のうちに全範囲を習得できないかもしれませんが、とりあえずは”習得できた”と仮定して別の専門書紹介へ参ります。

修士課程の学生さんには『電子移動の化学』を激推しします。他にも様々な電気化学本が売られていますが、私としてはコチラの一冊を何としてでも読んで欲しい。書籍名の通り、この本は電気化学を”電子”の側面から眺める本。ほぼ全章にわたって電子を主人公として話題が拡がり、平衡論や速度論などを快刀乱麻を断つが如く綺麗に説明しています。『基礎化学コース 電気化学』を読んでもピンとこなかった点が『電子移動の化学』を読むと分かってくる。基礎の基礎から説明を省略せず書いてくれるから道に迷わずついて (しがみついて笑?)行けます。正直言ってかなり難しい本。時間をかけて何度も読まなきゃサッパリ理解できないはず。本書を読めば「電気化学ってなに?」という根本的な質問に胸を張って答えられるようになる超本質的な理解を得たい方にどストライクな参考書です。ちなみに本書、前述した『基礎化学コース 電気化学』と同じ著者が書いた作品。基礎化学コースが読みやすかった方は『電子移動の化学』も相性バッチリだと思います👍

電気化学測定マニュアル 基礎編 (自分がやったことのない実験も含めて):~M1前期まで

学部生のうちから読み始めていただいた『電気化学測定マニュアル』。大学院生になったら自分がやったことのない実験のパートもぜひ読んでみて頂きたいです。研究遂行で大切なのが”どれだけ武器を有しているか”。実験手法を知っていればいるほど様々な実験が可能ですし、困難に直面したとき解決できる可能性をその分高められるのです。私自身、本書で仕入れた知識を元に実験を何個かやってみて、これまでの実験で説明できなかった一つの問題を解決することができました。”何枚カードを持っているかがどれだけ大事か”をまざまざと思い知りました。逆にもし実験手法をあまり知らなければ、そもそもその実験手法を (やってみよう!)とすらおそらく考え付かないはず。簡単な実験ひとつで大発見に繋がるチャンスをみすみす逃しちゃう可能性も。そんな重大な機会損失、皆さんはしたくないですよね?ならば一つでも多く武器を持とう本書を読めば戦うのに必要な最低限の武器をひと通り揃えられます

折角電気化学系の研究室にて大学院まで行くのです。基本的な電気化学実験手法はひと通り網羅しておきましょう。修士修了後、如何なる進路を選ぶにしても実験の知識は役立ちます。もし電気化学と関係のない領域にお進みになるにしても、『手持ちの武器を増やしておく重要さ』を体感しておくのは非常に重要だと思います。自分がやったことのない実験について理解を深めるのは難しい。もしどうしても分からない場合、せめて測定原理だけでも確認しておけばゼミや学会の聴講時に役に立ちます。

電気化学測定マニュアル 実践編 (自分と関連のありそうなパートを中心に):M1前期~M2後期

先ほど電気化学測定マニュアル基礎編についてお話ししました。ソレの発展版である『実践編』についても修士課程の間に目を通していただきたい。基礎編にはサイクリックボルタンメトリー (CV)やクロノポテンショメトリー (CP)など、基本的な測定法に関する内容がふんだんに詰め込まれています。それ等を全て総ざらいするだけでもかなり勉強にはなりますが、『実践編』でよりアドバンストな測定知識を仕入れておけば研究の幅やスピードが益々拡がり・上がっていくことでしょう。まずは自身の研究と関連性の高いパートから一つずつじっくりと読み込んで下さい。基礎編より専門的な内容なので理解するのが結構大変。ゆっくりで構いませんから丁寧に紐解き納得して次へ進んでください。余裕があれば自分と関連のなさそうな実験のセクションにも目を通してみましょう。一見無駄に思える知識の収集も巡り巡ってひょんなことから役立つ場面があるものです。

機器分析 (自分が使ったことのない装置も含めて):院生の期間中ずっと

学部生編でもご紹介した本書『機器分析』。測定機器全般について原理や特性を解説する大変優良な一冊です。学部生編では”自身が使っている装置のパートを読んでおきましょう”と述べました。修士課程ではそれに加え、自身が今後使う予定のなさそうな装置のパートも読んでおくのをオススメします。

どこで役立つのか?といえば他人の論文を読む場面ですね。自分以外の研究グループの論文を読む場面において、そのグループが使った測定装置について理解しておかなくちゃ始まりません。我々学生は研究者の卵。論文を読むとき「この人らの考察は妥当なのか?」と批判的に眺める必要がある。測定装置に関する知識があれば、”妥当なのか/妥当じゃないのか”を的確に評価できます。また、そのデータのどこが凄いのか?/真新しいのか?などデータの有する新奇性を正確に把握できるのです。測定手法と同様に、測定機器についてもこんな測定機器が”ある”と知らなきゃ (その機器を使ってみよう!)とすら考え付かないでしょう。自分の研究で行き詰った際、測定機器を変えてみれば一瞬で解決する場合も。たとえどれだけ高性能な機器でも得手・不得手があるものです。別の長所を持つ装置を使えば難題を乗り越えられる希望があり、そんな可能性を大きく広げてくれるのが『機器分析』の読書というわけです。

ムーア基礎物理化学 上下 (余裕がある方、特にD進者向け):院生の期間中ずっと

修士課程修了後に就職する方は研究と就活の両立に大わらわなはず。上に挙げた4つの専門書を勉強するので手一杯でしょう。今からご紹介する『ムーア基礎物理化学』は超余裕のある方向け。早期インターンで早々と内定を得てヒマになったり、そもそも就活などせずD進 (博士進学)しか念頭にないから時間的ゆとりがあったりする人に読んでもらいたい専門書です。

電気化学はその源流をたどれば”物理化学”に行きつきます。活量、溶液論、ギブスの自由エネルギーなど、物理化学の面影を感じられる単語が至る所に散らばっている。それ等をさほど理解せずとも論文執筆は可能です。専門用語でテキトーに誤魔化しておけば分かった”風”な文章は書ける。しかし、物理化学から逃げていては研究に深みを出せないのです。真新しい知見を生み出せず、既に解明済みな知識のレプリカしかどうやったって生み出せない。どうせ研究をやるなら時代の波に淘汰されない”ホンモノ”の研究をすべきです。物理化学を意識しながら基礎へ忠実に書いた論文は年月を経ても燦然とした輝きを放ち続けるに相違ない。海外のビッグジャーナルに掲載された論文をダウンロードし読んでみると、その多くの論文は物理化学の根本から逃げずにちゃんと議論しています。何か高級な装置を使用し小手先のテクニックへ逃げるのではなく、基礎の基礎を大切にしたがゆえにビッグジャーナルへの掲載が叶っているのです。

スパンの短い応用研究なら企業で将来いくらでもできる。大学は役に立たないかもしれない基礎研究にしっかり取り組める場所ですから、将来の人類の幸福を願って基礎研究することをオススメします。本書『ムーア基礎物理化学』を読めば物理化学の基礎的概念を大変スムーズに掌握できる。基礎研究を行うにあたり不可欠である頑強な土台を築けるのです。アトキンスやバーローなど物理化学本は他にも色々ございます。個人的には本書『ムーア』が最も読みやすく感じられたのでこの記事にて紹介いたしました。

最後に

電気化学系研究室に配属された修士課程の学生にオススメしたい参考書フローチャートは以上となります。この記事が皆さんの研究ライフの質を高めることを祈って文章を締めくくります。

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