【ミソフォニア】音に敏感な学生専用の合格後から始められる大学生活準備

札幌と筑波で電池材料を研究している北大化学系大学院生かめ (D1) です。高校2年次から、特定の音に対して特異な反応を示すミソフォニア(音嫌悪症)と向き合ってきました。特に、鼻をすする音や痰の絡んだ咳払いがトリガーとなり、意図せず感情がめまぐるしく移り変わる症状に悩まされています。

この症状は高校生活や大学受験において大きな障壁となりました。授業への集中が妨げられるだけでなく、周囲で絶え間なく発される不快な音に対して感情の制御に奔走する日々を送ったのです。テスト時には、隣席からのトリガー音で解答が手につかなくなるリスクと常に隣り合わせ。幸いにも、私の大学受験時には深刻な状況は発生しませんでした。しかし、「いつトリガー音が発されるか分からない」という不安は、精神的な重圧となって私を苦しめ続けました。

この記事では、北大合格から入学までの期間に実践した新生活への準備について体系的に解説します。これから大学生活を始めるミソフォニアの方々、そして症状との付き合い方を模索されている方々に向けて、実践的な示唆を提供できればと考えています。また、ミソフォニアのお子様を持つご家族にとっても、有益な情報となれば幸いです。

それでは早速始めましょう

定期的な運動習慣の確立

興味深いことに、私の症状は北大入学後、一時的に緩和されました。研究室配属となるB4で再び顕在化するまで、B1からB3までは比較的平穏な日々を過ごすことができました。この変化の背景には複数の要因が考えられます。

まず、受験勉強からの解放による精神的なストレスの軽減が挙げられます。高校3年と浪人時代の2年間、受験勉強に追われ続けた日々から解放され、まるでペガサスのように心が軽くなったことは確かです。次に、広島から札幌への移住という環境変化がもたらした転地療養効果も見逃せません。新しい環境での生活は、フレッシュな刺激となって心身のバランスを整えてくれた可能性があります。

しかし、最も重要な要因として私が確信しているのは、定期的な運動による肉体的疲労の蓄積。高校時代を振り返ると、体育や課外活動で体を動かした後は、トリガー音への反応が著しく緩和されていました。疲労が極限に達すると、音に反応する余裕すら失われるのです。この経験から、大学入学前に重要な気づきを得ました。意図的に身体を疲労させることで、症状の予防が可能なのではないか―この仮説に基づき、具体的な対策を講じることにしました。

講義のある日は必ず朝に30〜60分程度のランニングを実施。最後の500mは特にペースを最大まで上げて終えるという習慣を作りました。練習後は「もう大学に行きたくない」と感じるほどの疲労を伴います。それこそが本当の狙い。この状態で講義に臨むと、周囲の音が気にならないどころか、心地よい疲労感で眠気さえ覚えるほどでした。

健全なストレス解消法の確立

先述した通り、ミソフォニアの症状管理において、精神的ストレスと肉体的疲労は対照的な影響を及ぼします。精神的ストレスは症状を悪化させる一方で、肉体的疲労は症状を抑制する効果があるのです。この特性を理解することは、症状管理の上で極めて重要です。

私の経験では、ミソフォニアは精神的ストレスを起爆剤として肉体に発作を引き起こすような性質を見出しています。したがって、症状の管理には二つのアプローチが必要となります。一つは運動による肉体的疲労の獲得であり、もう一つは精神的ストレスの軽減です。

ストレス解消法として、私の場合はランニングが最も効果的でした。ほぼ毎日走ることで、精神的ストレスの軽減と肉体的疲労の獲得を同時に実現できています。ただし、必ずしもランニングである必要はありません。個人の適性に応じて、サイクリング、水泳、登山など、様々な選択肢が考えられます。運動以外にも、読書や音楽鑑賞といった静的な活動も精神的ストレスの緩和に効果的。ただし、これらの活動は肉体的疲労をもたらさないため、別途、筋力トレーニングなどを組み合わせる必要があります。

特に注意すべきは、ギャンブルなどの不健全なストレス解消法です。一時的な気分転換にはなるかもしれませんが、損失が発生した際の精神的ダメージは計り知れません。むしろ症状を悪化させる要因となりかねないため、厳に慎むべきです。

家族関係の再構築

症状が深刻化した際の避難場所として、実家の存在は極めて重要です。大学の講義に耐えられなくなったとしても、実家でゆっくり過ごすことができれば、心身を立て直すチャンスとなります。しかし、その実効性は家族との関係性に大きく依存するでしょう。

私の場合、家族との関係が複雑でした。父親は私と同様のミソフォニアを持っています。私の症状について深い理解を示してくれました。父の話によれば、祖父にも同様の傾向があったようです。これは、ミソフォニアに遺伝的な要因が存在する可能性を示唆しています。

一方、症状を持たない母親との関係は非常に難しいものでした。何度説明を試みても理解を得られず、「もっと寛容になりなさい」という言葉で片付けられてしまいます。さらに、私の部屋の前を通るたびに鼻をすする嫌がらせ行為は、受験勉強に深刻な影響を及ぼしました。勉強中に耐えず精神的ストレスをかけられ、A判定を取っていた京都大学農学部の受験にも失敗。家では10分おきに集中を妨げられていました。こんな環境では精神が破綻して本番に向けて力を蓄えられません。

この経験から、大学進学前に家族との関係を調整しておくことの重要性を痛感しています。症状への理解を得られない場合、実家は避難場所としての機能を失い、むしろストレス要因となってしまいます。そうなれば、一人暮らしの下宿の方がまだましな選択となってしまうのです。

最後に

ミソフォニアを抱える学生の大学生活適応に向けた準備について、実践的な方策を詳しく解説してきました。定期的な運動習慣の確立、健全なストレス解消法の構築、そして家族との良好な関係性の維持。これらの要素を適切に組み合わせることで、より安定した大学生活を送ることが可能となります。

本稿で示した方策は、私個人の経験に基づくものです。ミソフォニアの症状や生活環境は個人によって大きく異なります。それぞれの状況に応じて適切にカスタマイズし、自身に最適な対処法を見出していただければ幸いです。

皆様の新生活が実りあるものとなることを心より願っています。

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