こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (D1)です。高校生の頃から周囲の鼻をすする音が気になって仕方が無くなってしまい、大学受験や大学生活、そして今の研究生活でも音に苦しめられています。
私のような特定の音に耐えられない障害を医学用語で『ミソフォニア (音嫌悪症)』と呼ぶようです。ミソフォニアは2000年代に発見された新しい病気。病人自体は昔からいたようですけれども、あまりに発症者数が少なすぎて、あるいは自覚症状はあっても病気かどうか本人には分からず、つい最近まで病の存在自体が認知されていなかったみたいです。
この記事では、ミソフォニアの方に趣味で読書をオススメする3つの理由について書きます。私自身、読書へ多分に心を救われてきた側面があるので、ミソフォニアの方へ読書の魅力を存分に伝えられたら幸いです。
それでは早速始めましょう!
本は我々の嫌な音を決して発さないから
本は生き物ではありません。ポイっと机の上に置いおいても動いたり喋り出したりすることはないのです。もちろん鼻もすすりません。咳払いしないし息さえしない。咀嚼音だなんて論外でしょう。そもそも口がないから食べ物を噛みたくても噛みようがありません。唯一発する音はといえば、我々がページを手繰るときに生じる”紙の擦れる音”ぐらい。コレぐらいなら耐えられましょう。我々自身が能動的に発する音ならそもそも嫌にならないはず。もしも擦れる音が嫌ならkindleの電子書籍にしてみれば解決👍 画面をタッチするだけで次のページへと遷移するから♪
ミソフォニアの方に読書をオススメする最初の理由は、本は我々の嫌いな音を絶対に、何があっても発さないからです。コイツほど信用できるものはない。大学生の「行けたら行くわ♪」や「一生のお願いっ!」の1兆倍もの信用度。だって生き物じゃありませんもの。あぁ、安心。本当に楽。外出中に全身へまとった警戒心をノーガードで脱ぎ捨てられるのです。テレビや映画、YouTubeなどの映像メディア、およびAudibleやCDなどの音媒体は時に信用できません。たとえどれだけイケメン/美人が一生懸命喋ってくれていても、息継ぎの音、鼻をすする音、僅かに漏れる咀嚼音などが気になるともう聴いていられないから。
私の場合、昔は女優・新垣結衣 (ガッキー)さんの大ファンでした。しかしYouTube『赤い糸』というガッキーの歌う歌を聴き始めた際、ガッキーの息継ぎの音を聞いた瞬間に鳥肌が立って聞くのを止めちゃったのです。それ以来、YouTubeでは①楽器の演奏、②将棋の棋譜、および③ゆっくり○○動画の3ジャンルだけしか閲覧できておりません。寂しいことこの上なんだけれども音が気になっちゃうのだから仕方がない。その点、読書ならばジャンルを選ばず如何なる本でも手に取れます。無音なので絶対安心。発作を誘発する要因がありません。
語彙力が付き、苦痛の正体を言語化出来るようになるから
「本を読むと語彙力が付く!」と古今東西、色々な方が仰っています。本に書かれた言葉が吸収され、やがて己の血肉となるからです。私自身、大学生になる前までは全く本を読んできませんでした。中学時代の読書感想文ですら、書籍の裏表紙からストーリーを推測してテキトーに書いて出したぐらい。話す言葉は幼稚そのもの。高3のとき、父から「お前は小学生か笑?」とバカにされるほどの体たらく。大学生になり、すっかり時間を持て余した私は本を読むように。音に敏感な私には本しか心を通じ合える友達が居なかったも同然。本を読めば読むほど自分の言葉遣いが大人びていきました。大学院修士2年次に漱石全集を読み終えた頃、逆に周囲の人間の言葉遣いの幼稚さへしみじみと思い至るまでに。
ミソフォニアの方に読書をオススメする2つ目の理由。それは、読書によって身に着けた語彙力でもって苦痛を言語化できるようになるからです。語彙力が高ければ高いほど己の苦痛を的確に表現できる表現が見つかりやすくなります。今までは (何となく嫌だなぁ…) と思っているだけだったのが、 (鼻をすする音が耳に入った途端、まるで身をえぐり取られるような痛みが走って凄く不愉快だなぁ…) みたいな感じ。
苦痛を言語化できた途端、苦痛を予防するための具体的な対策を打ち出せるように。
- どんな音が嫌なのか?
- 聞こえるとどんな感情になるのか?
- 嫌な音が聞こえる状況はどんなものか?
- どうすれば周囲と関係を悪くせずに済むだろうか?
と症状の正体やその核心にグイグイと迫って行ける。コレができると何が良いか?周囲の人間に対して「嫌な音を発さないで」とお願いする際に役立ちます。
世の中はミソフォニアではない人間が大多数。常人には我々ミソフォニアの苦痛をどうしても理解できません。皆さん、誰かから「もう少し音に寛容になったら?」と言われたことはありませんか?私は親や高校の友人などから何十回も言われてきました。”寛容さ”が云々という次元の話じゃない。こっちは音が命取りになりかねない苦しい病気に苛まれているんだもの。しかし、「聞こえたらしんどいからその音止めて!」と幾ら気持ちを訴えた所で、相手が理解できないままでは不快音を止めてもらえません。具体的に、なるべく分かりやすい表現でもって相手に伝えなければならないのです。
相手を説得するときに重要なのが、”相手のアタマで理解できるような”言葉で症状を伝えること。その際、極めて高い表現力が求められますが、読書をすれば自然と語彙力が高まり表現力も上がり、相手を説得できる確率が一層高まって来るわけです。
瑞々しい文章が体に浸透して癒されるから
ミソフォニアの方へ読書をオススメする最後の理由。それは、読書には心身を癒す働きがあるからです。どうせ読書をするのであれば端正で美しい文章を読みたい所。今だけ・金だけ・自分だけな現代社会に汚染された文章を読んだらかえって疲れます。鴨長明の方丈記、夏目漱石の草枕、三島由紀夫の金閣寺など、読むだけで嘆息 (←”窒息”じゃありませんよ笑) してしまうほどの美麗な文章をたくさん読みましょう。豪華絢爛な三島文学は心を躍らせ活気づけてくれますし、質素ながらも瑞々しさ溢れる漱石文学は体の隅々まで言葉が染み渡る心地よい感覚を強く味わえるでしょう。
我々ミソフォニアを患う人間は日々疲れています。一晩眠って元気になっても外で半日過ごせばグッタリ。そこで間違っても安易にMonsterやRedBullを飲んでは駄目。アレ、脳にとっては麻薬ですから、飲めば飲むほど体がおかしくなって、やがては取り返しのつかないことに。もっと健全な癒し方があります。それが読書。言葉に癒されるのです。お金を払ってマッサージ店に行くよりよっぽど安く、無音で、しかも確実に癒されます。好きな作家を見つけて毎日読んで心を洗い続けて下さい^ ^
余談ですが、前述の鴨長明[平安末期~鎌倉前期]もおそらくミソフォニアだった思います。音に関する描写が異様に鋭く、なおかつ人とのかかわりを極端に避ける様子から (我々と感性がよく似ているなぁ…)とどこかシンパシーを感じるのです
最後に
ミソフォニアの方に趣味で読書をオススメする3つの理由はコレで以上。本を読むだけで心が楽になるので是非是非お試しください (*≧∀≦*)
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