北大と国研で研究している化学系大学院生かめ (D2) です。研究室配属されたB4から修了するD2までに国際誌にて筆頭論文を六報執筆しました。配属以来、毎日複数報の英語論文を読んでいます。D1後期にはイギリスでの研究留学を経験。英語を相棒として研究活動を進めてきました。
大学入試で英語に対する苦手意識を抱えた方は多いのではないでしょうか。日本語とあまりに言語体系の異なる英語に四苦八苦して頭を抱えたでしょう。特に理系の方は災難だったはず。数学や理科などの勉強で忙しいのに、英語までやらなきゃいけないだなんて。しかし、大学院生は外国語からは逃れられません。一部文科系専攻の方を除けば、研究活動を営むのに英語は不可欠でしょう。情報収集や論文執筆で英語と向き合う必要があります。どうにかして英語力を鍛えねばならない。院生専用の英語勉強法は無いものか…
そこでこの記事では、私が考案した大学院生専用の英語勉強法をご紹介します。英語力不足でお悩みの方や、英語力へさらに磨きをかけたい方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。
それでは早速始めましょう!
- 英検準一級 合格(B1・3月)
- イギリス大学院留学(D1・10月~1月)
- TOEIC 805点(D2・9月)
論文全体を音読する
見込める効果
・情報収集速度向上
・語彙力向上
大学受験では英文読解力向上のために英文を音読してきた方が多いのではないでしょうか?高校で支給されたテキストや速読英単語などを声に出して何度も読み込みこんできたでしょう。音読は英文を返し読みする癖を無くします。英文を前から後ろへと自然な順番で理解できるようにしてくれるのです。結果的に英文読解が速くなる。リスニング力やスピーキング力の向上にも一役買ってくれます。英文を丸ごと覚えるぐらいまで読めば語彙力が高まるかも。英文音読は効果絶大。私自身、音読のおかげで英語の成績を高く保てました。
これだけ効果のある勉強法を院生になって止めてしまうのは勿体ない。英語力を向上させたいなら、まずは英文を音読しましょう。とっておきの教材があるじゃないですか。英語論文ですよ。アレを教材に使うのです。論文を声に出して読んでみましょう。何十ページもる長いものを読むと声が枯れます。5ページ程度の短い論文を声に出して全文読んでみて下さい。毎日一報、無理なら週に一報でも読めば確実に英語感覚が変わってきます。
私自身、B4とM1のとき、英語論文を週に一報ずつ音読していました。おかげでリーディング力が、特に速読力が信じられないほど高まったのです。他の論文を読むときの情報収集速度が高まりました。論文執筆時、引用文献の目利きをするにあたって、ひと論文あたり10秒未満で処理できるように。
また、音読のおかげで語彙力が高まりました。現在、英語論文作成は生成型AIの使用が一般的。しかし、AIが適切な専門語句を使ってくれるとは限りません。AIに翻訳して貰った原稿に目を通し、問題がないかどうか最終チェックしなければならないのです。豊饒な語彙力があれば論文を適切に修正できます。それはつまり、より良い論文を書けるようになるということです。
英語論文はネット上で無料ダウンロードできます。もちろん読み放題。院生の間に学びまくって下さい^ ^
論文を自動読み上げ機能でリスニング教材に
見込める効果
・リスニング力向上
・専門用語の定着
英語を苦手にする最も大きな要因は、リスニングの難しさではないでしょうか?音と音が繋がったり省略されたりするからちょっと何を言っているのか分かりません。国によっても微妙に発音が異なります。アメリカ英語は音のつながりが多くて難しい。本場の英語はアクセントこそ強いけれども、ボソボソ喋るから注意していないと聴き取られない。リスニングのせいで英語を嫌いになった方も多いでしょう。私自身、中学一年生のとき、英語のリスニングが苦手すぎて授業へ出席するのが苦痛を感じました。
大学院生になっても英語リスニングからは逃れられません。国際学会での発表をするならリスニングの本格的訓練は不可欠です。日本国内で生きていこうと決めた人でも英語の触手の守備範囲内。会社の昇進試験ではTOEICスコアが必要。外資系企業とのやり取りでも英語力が求められるでしょう。
リスニング力を高めるとっておきの方法があります。教材は、またもや英語論文。パソコンの自動読み上げ機能を使いましょう。論文を最初から最後まで聴き通して英語耳の養成を行ってください。Windows11には、アメリカ英語とイギリス英語のほか、様々な読み上げオプションが装備されています。読み上げ速度を2倍速にしたりゆっくり目の0.8倍速にしたりすることも可能。お好きな設定でリスニング学習しましょう。毎日やっていれば着実に英語を聴き取られるようになります。
私の場合、音読した英語論文をリスニング学習にも使っていました。既に論文を音読で読み通している以上、内容はおおかた頭で理解できています。リスニングというよりもシャドーイング。流れてきた音声をソックリそのまま口に出せるか試していたのです。リスニング力向上のおかげで国際学会での質疑応答を楽にこなせました。相手が何を言っているのかが分かるし、意思疎通できるのが楽しくて会話が弾みます。また、シャドーイングで脳へ専門用語がインプットされました。語彙力の向上は英文校正力の向上と直結し、より良い論文の執筆へとつながったのです。
瞬間英作文トレーニングをする
見込める効果
・スピーキング力向上
・総合的な英語運用能力の向上
日本人にとっては、リスニングと同様、スピーキングもなかなかの鬼門。複雑な構造の英文を読み解ける人でもスピーキングとなったら急にたどたどしくなります。日本の学校ではスピーキングの練習をほとんど行いません。それもそのはず。大学受験でスピーキングの試験など行われませんから。当然、英語は話せれば何を喋っても良いわけじゃない。内容の伴わない薄っぺらい英語ばかりペラペラ話されても困ります。中身が伴っているのは大前提。そのうえで英語を話せることが重要なのです。英語を話せなかったらどうにもなりません。あっという間に相手から舐められ、議論や交渉の場で不利な状況に陥るでしょう。
大学院生には学会や研究室内で外国人と交流する機会があります。そうした場所で英語を話せるようになれば、世界が一気に広がってくるのです。ひょっとしたら国際学会にてオーラルセッションで発表できるかもしれません。ポスターセッションでも時間が経つのが惜しくなるほど楽しめるでしょう。英語を話せるほどの言語運用力の持ち主なら、TOEICスコアも自ずとついてきます。TOEIC対策をせずとも800点超えは当たり前。テストが得意な方なら900点を超えるかもしれません。
スピーキング力強化の方法をお教えします。瞬間英作文トレーニングをやって下さい。瞬間英作文とは、簡単な英文を何度も繰り返し作成して、英語生成回路を構築する訓練法。脳味噌をOSごとバージョンアップしてしまおうという試みです。
最初はステージ1・中学生レベルからスタートしましょう。私の名前はドナルド・トランプです、のような超基本的なものから。最初の方はカンタンです。「これぐらい流石にできるわ。なめんなよ」とキレたくなってしまうかも。しかし、ページをめくるごとに様相が変わってきます。段階的に文法がレベルアップしてきて、しまいには瞬間的に英文を作れなくなるレベルに達するでしょう。己の英作文力の低さに落ち込むかもしれません。しょげ返ることなく続けて下さい。仮にスピーキングが苦手でも、英文法さえ知っていたら難なくついて行けるでしょう。
瞬間英作文は4ステージ制。ステージ1は中学生レベル。ステージ2は中学上級~高校初級レベル。ステージ3は高校中上級レベル。そしてステージ4は達人の領域。私は学部生の頃、瞬間英作文トレーニングを毎朝30分、一年間行いました。一日一日の上達幅は極小でも、積み重ねればスピーキング力が嫌でも高まっていったのです。おかげで20ワード程度の英語なら即座に作れるように。言語の壁を感じなくなり、外国人と話すのが怖くなくなって、異文化交流が楽しくなったのです。
瞬間英作文の効果はスピーキングだけにとどまりません。英語全般の総合的運用力が向上するのです。英語脳ができ上がったおかげで、今まで以上に英語を楽に聴き取られます。英文を読むのも自ずと速くなるでしょう。瞬間英作分は英文解釈力をも高めてくれるのです。さらにはライティング能力まで高まります。簡単な英文法の操作性が高まり、思い通り自在に文章を繰り出せるようになるでしょう。
瞬間英作文の本は表紙こそ胡散臭いですが、中身は本当にしっかりしています。スピーキング力を鍛えたいなら、英会話練習するよりもまず瞬間英作文で鍛錬を積んでください
論文原稿を生成型AIに英文校正してもらう
見込める効果
・ライティング力の向上
テクノロジーの進歩は凄いです。Google翻訳でAIの杜撰さを笑っていたら、DeepLが出てきて人間よりも正確に翻訳できるようになりました。そんな所へ今度は怪物が登場。文脈や行間を認識して適切に処理する生成型AIが現れたのです。今後、はたしてどのような化け物が出てくるでしょうか?シンギュラリティが到来する頃には、研究計画立案から実験、そして論文執筆まで全部AIが担っているかもしれません。そうしたら学位なんてもういりませんね。あーあ。なんであんなに苦労して研究したのだろう。
自分自身、論文の英語化は生成型AIに任せっきり。学術雑誌に投稿する論文はもちろん、博士論文の翻訳までしてもらいました。従来型翻訳ソフトよりも生成型AIの方が作業速度が速いのです。字数制限もない。原稿ファイルを投げ込むだけで自動的に訳してくれます。おまけに正確。DeepLのような訳し忘れがほとんどありません。従来型ツールを使う必要性が限りなく低いのです。校正会社にお金を払って英語化してもらう時代はもう終わりでしょう。技術の進展はあまりに恐ろしい。盤石かに思われた翻訳産業をあっという間に陳腐化してしまいました。
大学院生は生成型AIに頼りましょう。生成型AIの適切利用こそが言語の壁を乗り越えるのに役立ちます。というか、この記事をご覧の方は、生成型AIを「使わねば」なりません。なぜなら、あなたのライバルは、私を含めて全員AIを使っているからです。一人で従来型ツールを使って頑張る努力には涙ぐましいものがあります。あなたがカメのような足取りでゆっくり進んでいる間、生成型AIというジェット戦闘機に乗った他の方から超音速で追い抜かれるでしょう。英文執筆速度の遅さは業績不足に、ゆくゆくは学振DC/PDなどフェローシップの獲得競争力の相対的低下に繋がります。お金や就職面で問題を抱える未来は想像するに難くありません。
しかし、AIに頼りっぱなしだと自力で英文を作れなくなるのも事実。AIがあまりに賢すぎるがあまり、己の英作文力をメンテナンスする努力を怠りがちに。たまには自分で論文原稿を英語化してみてください。作った英文を生成型AIに校正してもらえば非常に良い学びになるでしょう。生成型AIは親切にも、校正箇所をなぜ校正したか説明してくれます。どれだけヘタクソな英文を送りつけても笑わず真面目に返信してくれる。人間相手に校正をお願いするよりも断然恥ずかしくありません。英作文力強化には、瞬間英作文と生成型AIの有効利用をオススメします。
言語処理が特に得意なAIはClaude AI。人間が書いたのかと思わせるほど情緒的な文章だって記せます
まとめ
以上、大学院生の研究力が劇的に向上する最強の英語学習法を解説しました。
英語力を向上させられれば見える世界が変わってきます。日本国内でのキャリアはもちろん、海外への道だって拓けてくるでしょう。英語力を高められたことによって自信が培われるかもしれません。口角が上がり、運が巡ってきて、何かすごく良い出来事が起こる可能性も。いずれにせよ、大学院生は英語を得意になっておくべきです。英語をツールに世界を股にかけた大活躍ができるようお祈りしています。
本記事が、日本人の宿敵たる英語を手なずける一助になれば幸いです。
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