プラットホームで日本人大学生たちとの出会い
車内で知り合ったブルガリア人のネイジーとホームでお別れの挨拶。『良い旅を!』「あなたも家まで気を付けて帰ってね^ ^」と笑顔で別れた。
横から『もしかして日本人ですか?』と声を掛けられた。振り向くと4人の男子旅行客が。彼らは現役大学生。中学・高校の同級生らしい。全員がヨーロッパ各国に留学中。タイミングを合わせて集まり、一緒に旅行している真っ最中とのこと。私にはそもそも留学経験のある知り合いさえいないから羨ましい話。同じタイミングで4人揃って留学中というのもどこか運命的じゃないか。一部屋に集まり、夜通し遊んでいたらしい。いいなぁ。私にもそうして遊べる友達が欲しかったな。
「3か月使えるユーレイルグローバルパスで旅行中なんだ」と言ったら急に『お金持ちはいいなぁ…』と言い出した。いやいや、大学生のうちに海外旅行や留学ができる君たちもお金持ちだよ?私なんて学部時代はほとんどの期間、貯金額は常にひと桁万円だったもの。日本を出るのでさえままならないお金しかなかったのと比べたら雲泥の差。私より遥かに良質な服を着、高額な授業料を支払っているじゃないか。私の方がよほど貧乏人。なのに『金持ちはいいなぁ…』とずっとこぼしている。まるで乞食のようだった。肌が合いそうになかったので「じゃあ、旅行楽しんでください♪」と言って別れた。
反対側のホームには落書きだらけの列車が停止していた。治安の悪さが心配だ。貧しい国だから注意しなくては。ソフィア駅の出発ロビーへ。なんだか暗いな。大丈夫か、この国は…?もしかしたら国との相性が悪いのかもしれない。まぁ、とりあえず外に出てみよう。
メインの大通りは流石に栄えていた。ひっきりなしに自動車が行きかい、路面電車も時々脇を通過した。建物は全体的に淡い色使い。薄い黄色、薄い赤色、薄い青色など控えめな主張だ。列車の中でネイジーから『ソフィアは1970年代のモスクワと同じような街並みなんだよ』と説明されたのも納得。渋いデザインに美的情緒を感じかねるが、まぁ、美しいのだろう。ブルガリアにもモスクがあった。中東からほど近いヨーロッパ圏にはこんな所にも宗教の影響がみられるのか。
ちょっと地下に潜ってみたら遺跡のモニュメントがあったのには驚いた。説明パネルを読みたいが、ちょっと何を言っているのか分からない。象形文字にしか見えないキリル文字での説明。せめて英語で書いてくれなきゃ旅行者に読み解くのは不可能。
息をのむほど美しい大聖堂
フラフラ街を散策する。右手に大きな教会が見えた。あれがブルガリア唯一随一の見所、アレクサンドル・ネフスキー大聖堂である。何も観光せずに帰るのは流石にマズいので中に入ってみようか。入場は無料。扉を開けると別世界が広がっていた。
あまりの美しさに思わず息をのむ。なんて壮大な教会なんだろう…!気持ちが良く、昇天して天井まで一気に吸い寄せられてしまいそうな気がする。嗚呼、素敵だ。コレを観られたならブルガリアまで行った甲斐もあるわ。ベンチに座って10分ほど天井を見つめる。心の隅々まで浄化され、スッキリとした気持ちで聖堂を後にした。
廃墟に失望
あれだけ美しい教会があるにもかかわらず、ソフィアの街にどことなく汚い印象がある。それもこれも全て廃墟のせいだ。使用済みの建物を取り壊さずその場へ放置してしまっている。建物は劣化し、外装が剥げたり錆びたりして見た目をあっという間に損ねてしまう。まぁ、取り壊しにもお金がかかるから放置する気も分からなくはない。が、旅行者としてはこの街へ長く滞在する気を失ってしまう。長期滞在はおろか、複数日の滞在ですら受け入れられない。当初、ソフィアを二泊三日で旅行する心積もりでいたが、一泊繰り上げて明日に立ち去る意思を固めた。
ホテルの周りも何もない
見所のある南側ではなく、あえて北側に宿をとった。というのも、南側より北側の方が安く宿を取れたからだ。お金をケチった結果、大変な道のりを歩く羽目に陥った。ホテルまでまともな舗装路はない。雨でぬかるんだ荒野をひたすら進む苦行を強いられてしまった。シューズはドロドロ。汗はだくだく。おまけに雨まで振り出した。「もう、なんて日だ…!」と悪態をつく。
1時間ほど歩いて目的地に到着。今回は本旅行初の個室ホテル。”一泊4,000円弱で三ツ星ホテルに泊まれる”と知って予約した。フロントでお姉さんに「二泊で予約したけど、やっぱ一泊しか泊まらないわ」と告げた。『分かった。ごめんね、返金はできないの…』「えぇよえぇよ。返金不可と知ってて予約したんやし、宿泊日数を短縮したのは自分の側やから特に文句はないよ」『そう… なんかごめんね』
流石は三ツ星ホテルなだけあり、部屋は広々として超快適だった。フカフカのベッド。開放的な間取り。文句は無し…かに思われた。だがシャワーから水が出なくて失望。どうなってんねん笑。一体どこが三ツ星ホテルなんや。フロントに文句を言ってみるも、部屋の変更は受け付けられないとのこと。『ごめん、我慢して…』「分かったよ、もう…!」初っ端から良い印象を得られなかった。
ドミノピザ
18時ごろ、お腹が空いてきたので1Fに降りた。この宿には有名なレストランがある。”格安でブルガリア料理を堪能できる”との口コミを見て食事を楽しみにしていた。だがフロントのお姉さん曰く、『あなたの滞在期間中、レストランはずっと閉まっているの…』と言われて絶句。果たして何のためにわざわざ悪路を歩いてこのホテルまで来たのか分からない。まぁ、いいや。明日で出ていくから何も言うまい。
それよりお腹に何か入れたい。朝から何も食べておらず、胃酸が食道を遡上し、胸やけを起こして少し気持ちが悪くなってきた。「この近くにレストランやスーパーはない?」『無いのよ。ごめんね』「まぁ、分かっていたけど…笑」と絶食を覚悟。するとお姉さん、『デリバリーで何か頼まない?』と私へ提案して下さった。それしかないならそうしたい。宅配でピザを取り寄せてもらった。
まさかブルガリアでドミノピザを食べるとは予想だにしていなかった。日本に居てさえ自分でピザを買ったり注文したりしたことが無いのに。ブルガリアっぽい要素は一つだけ。チキンの漬けタレがヨーグルトである。意外と合うから面白い。空っぽのお腹にピザとチキンとコカ・コーラを次々と放り込んだ。
明日の移動先を検討
はてさて、明日はどこに行こうか。第一候補はルーマニア。第二候補はセルビア、そして第三候補はギリシャである。
ルーマニアまでは電車で10時間。乗り換えは2回。乗り換え時間は各30分との情報を得た。寝台列車で2時間もの大遅延を経験した。トランジットタイムが30分しかなければ乗り継ぎを逃してしまいそうな予感。セルビアまでの電車は無い。だがバスを使えば乗り換えなしで€30 (4,700円)で行ける。ギリシャは魅力的な行き先だ。ただ物価の高さが気がかりだ。あと、ギリシャから次の行き先を考えるのが非常に困難だ。いまいち興味をそそられぬ北マケドニア、もしくはフェリーでイタリアに渡るしかない。
第二候補のセルビアに決めた。首都・ベオグラードまでバスで向かおう。今度はホステル。二泊三日の予定。調べてみると見所が沢山ある。ソフィアのように退屈せずに済みそうで安堵した次第である。
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