博士課程を生き延びるために必要な4つのタイリョク

博士課程に必要な能力は何か、と聞かれたら、研究力や英語力を思い浮かべる方が多いでしょう。もちろんどちらも大事です。ただ、実際に博士課程を走り切ってみると、もっと手前のところにある力の重要性を痛感しました。

研究の才能がいくらあっても、途中で倒れたら意味がありません。倒れずに完走するために必要だったのは、体力・耐力・諦力・泰力の4つでした。字面だけだと体育会系の精神論に見えるかもしれませんが、中身は至って実用的な話です。ひとつずつお伝えしていきます。

目次

体力:長時間の作業を支える土台

研究室生活は体力勝負。一番大切なのは言うまでもなく自分の研究で、起きている時間の大部分を使って研究データを集めていきます。専攻ごとに定められた本数以上の論文を出版しなければ修了できませんから、研究を疎かにするわけにはいきません。

ところが、博士学生の仕事は研究だけではありません。ゼミの準備や後輩の指導を、研究のスキマ時間にこなしていく必要があります。研究で頭を酷使してヘロヘロになった状態から別の仕事に取りかかるのはなかなかしんどい。

博士学生には、多忙な日々を乗り越えられるだけの強靭な体力が欠かせません。肉体的な体力はもちろん、長時間考え続けられる思考体力も求められます。最低限の体力がなければすぐにバテてしまいます。研究で疲れ果ててゼミの準備が手につかず、時間確保のために直前に徹夜なんてしようものなら、一週間ぐらい調子が狂いますからね。博士課程まで上がると、もう無茶できない身体になってしまっています。

逆に言えば、体力さえあれば大概のことはどうにかなります。研究と他の仕事との両立も、体力の土台があってこそ成り立つのです。

博士進学を考えている方は、今のうちから体力を養っておいてください。週に2〜3回、1回30分以上の有酸素運動で十分です。すでに博士課程に在籍している方も、座ってばかりでは頭が煮詰まっておかしくなります。息抜きを兼ねて、散歩やランニングを生活に取り入れてみてください。

耐力:ストレスやプレッシャーに耐える力

私の博士課程は忍耐の二年間でした。論文がリジェクト続きでも辛抱強く投稿し続ける。早期修了の期限が迫る中、間に合わないかもしれない不安に耐える。誰かの無神経な発言にも言い返さず堪える。全ては博士号取得のためです。

私はあまりストレスに強い方ではありません。何度ヘコたれても立ち上がる力はありますが、ノックアウトされないよう姿勢を維持し続けるのは苦手でした。博士課程在籍中、途方もないストレスに押し潰され、何度も諦めかけました。ひとつの苦境をやり過ごした瞬間、息つく暇もなく次の困難に見舞われるのが博士課程です。

私はあまりに辛すぎて、アパートの壁の三方に新垣結衣さんの顔写真を貼って癒しを求めたぐらいですから。ガッキーの笑顔を眺めているだけで、辛さが幾分和らぎました。ガッキーさん、本当にありがとうございます。救われました。

博士課程ではストレスをこらえる耐力が必要です。プレッシャーに負けず、むしろはねのけてしまえる心の強さがあれば理想でしょう。

もともと鈍感な人はあまり心配いりません。博士課程への適性は高いぐらいです。私のように、些細な不安にも辛さを感じてしまう人は要注意。耐え、耐えきれなければ発散して、気分を紛らわせながら完走を目指しましょう。適度に息抜きするのがポイントです。

私自身、研究で辛くなったときは趣味のランニングやブログ執筆に意識を向けていました。とりわけブログには助けられましたね。在学中、ストレスを発散するために400記事以上も書いて気持ちをなだめたのです。論文執筆よりブログの方が筆が進んでいた時期があったのは、指導教員には内緒にしておきたい所。どれだけストレスためてるんだ、という話ですが、おかげで無事に修了できたので結果オーライでしょう。

諦力:当初の目標に固執せず手放せる力

研究では、物事が自分の思い通りに運ぶケースはあまり多くありません。順風満帆にうまくいく期間なんてごくわずかですよ。

自己評価では満点の論文を投稿したのに、ものの数日でリジェクトされることがあります。満点をつけていたのは自分だけだったと気づかされる瞬間は心にグッときます。共同研究先の都合で、D進当初の予定より大幅にスケールダウンした研究に切り替えざるを得ないこともありました。私の場合、D1の一年間は丸々実験ができませんでした。おまけに導入予定だった装置が結局導入されず、研究方針を泣く泣く変更して対処したのです。やりたいことの3割もできなかった。

私は一度決めたことになかなか見切りをつけられません。最初の目標を何としてでも成し遂げたい、成し遂げるまでは終われない、とつい意固地になりがちです。頑固さなら自信があります。国税庁の職員よりも融通が利かない自覚がああります。

ただ、博士課程で見舞われた諸々のトラブルには、さすがに柔軟に対処せざるを得ませんでした。そりゃそうです。無理なものは無理なのですから。雑誌の編集者にリジェクトされたら掲載の望みは断たれます。共同研究先の都合で実験できなければお手上げでしょう。導入が見送られた装置の到着をいつまでも待っていては研究が進みません。

博士課程に行くなら、諦める力が欲しいところです。当初の希望を手放し、別の希望を見出せる柔軟さがあると良いでしょう。心機一転やり直す切り替えの早さも欠かせません。どんな研究でも5年や10年ほど粘ればそれなりの成果を得られるかもしれませんが、博士課程は三年しかなく、粘るにも限界があります。軌道修正が必要な場面で舵を切れなければ、オーバードクターへ一直線です。

自分の力ではどうにもならない事態に直面したとき、当初の目標をある程度まで手放せるかどうか。標準年限で修了できるかどうかの境目は、案外そのあたりにあるかもしれません。

泰力:何事にも動じない力

博士課程では予想外の事件がつきものです。知らない土地を旅行するときハプニングが次々と起きるように、未開拓の学術領域を切り開いていく博士課程でも頻繁にトラブルが発生します。

私はD1の10月から半年間、イギリスに留学しました。訪問先に選んだ研究室は、行ってみると廃墟同然の設備でした。使用予定の装置が軒並み壊れていて、何ひとつ実験を行えなかったのです。電極材料のリチウムがね、空気と反応して水酸化リチウムになっていたんですよ笑。渡航前に抱いていた壮大な計画は、イギリスの雨に打たれて消えました。

帰国してようやく立て直せるかと思った矢先、D2の5月に追い打ちがかかります。論文の基軸に据えていた仮説が根本から誤りだったと判明しました。論文用に集めていた全データがゴミになったんですよ。悲劇が悲劇を呼ぶ逆スパイラル。さすがに「もういやだ!!!」と頭を掻きむしりました。

博士課程では泰然自若の構えがあると心強いです。どんな事態にも動じず、どっしり構えて、冷静に解決策を探れる力があれば理想的。私のようにイチイチ気分を激しく変動させていたら身が持ちません。メンタルのジェットコースターは韓ドラの世界だけで十分です。画面のこちら側でもドラマを演じる必要はありません。

皆さん、どうか安心してください。大抵のことは何とかなります。もし何ともならなければ、周りに泣きつけばいいのです。大事なのは、大げさにとらえすぎないこと。トラブルが起きたとき、まず深呼吸して「まぁ、何とかなるだろう」と思えるかどうかで、その後の展開はずいぶん変わってきます。焦って致命傷を受けないよう、十分注意してください。

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