私は博士課程を二年間で修了しました。通常は三年かかるところを、一年短縮して飛び級修了したわけです。
指導教員から課せられた業績要件は、二年間で査読付き英語筆頭論文を五報以上出版すること。どうしても早期修了したかった私は、息つく暇もなく論文を書き続けました。研究以外のすべてを犠牲にしましたが、頑張りすぎて研究が嫌いになるほど疲れました。
修了できたこと自体は嬉しかったですよ。ただ、もっとゆっくり研究してもよかったんじゃないかと今では思っています。仮に博士課程をやり直せるなら、私は二年半での早期修了を狙うでしょう。
この記事では、過去の反省を踏まえて、二年半での修了をオススメする理由を解説していきます。
早期修了の経歴を楽に手に入れられるから

早期修了を狙っている方は、早期修了という経歴そのものに憧れを感じているのではないでしょうか。私の場合は、大学受験の浪人で背負った一年間のビハインドを取り返すのが動機でした。
通常は三年かけて修了するところを、あえて半年ないし一年早く出る。博士課程の早期修了者は全体の一割もいませんから、早期修了した時点で経歴に箔が付きます。一年短縮なら金箔だし、半年短縮でも銀箔。どちらであれ、早期修了者だけが持てる輝きです。
そして、半年短縮の方が、一年短縮よりもはるかに現実的なんですよね。なぜなら、研究に使える時間が半年長いからです。D1よりD2、D2よりD3と学年が上がるにつれて、実験にも論文執筆にも慣れてきます。同じ作業をパパッと片付けられるようになるんですよ。半年短縮修了者はD3前半の半年間をフル活用できるので、早期修了に必要な業績をずっと楽に積めるでしょう。
一年短縮修了を経験した人間として正直に言います。二年で出るのは相当キツい。博士課程の間、研究以外のほぼすべてを犠牲にする覚悟が要ります。土日祝日も返上して研究に充てる生活が二年間続くと思ってください。
半年短縮修了は、健康で文化的な最低限度の私生活を営みながらでも目指せるラインです。三年かけて出るよりもほんの少し頑張れば手が届く。ひと踏ん張りで銀箔が手に入るのだから、やってみる価値は十分にあるでしょう。
海外留学で就職の足掛かりを作れるから

博士課程の早期修了を狙う野心家なら、海外の二文字にも心を惹かれているのではないでしょうか。海外で働くことを視野に入れているなら、就職前に現地で暮らしてみることを強くオススメします。
書籍や動画で得られる情報と、実際に暮らして初めて分かる肌感覚は別物です。暮らしの中で感じるギャップを許容できるかどうか、住んでみるまで分かりません。海外を夢見ている人でも、暮らしてみたら日本の方が肌に合うケースはよくありますから。
私自身、D1後期にイギリスへ研究留学しました。留学先選びで盛大にやらかして海外就職の夢は砕けたのですが、数か月間の海外生活で海外との相性を肌で確かめられたのは大きな収穫でした。
さて、ひとつ問題があります。早期修了と海外留学をどう両立すればいいのでしょうか。博士課程中の海外留学は半年間が主流ですが、一年短縮修了を目指す場合、留学で半年間研究が止まると、残りは一年半です。一年半で早期修了に必要な業績を揃えるのは、正直かなり厳しいですよ。私は一年短縮修了でしたが、留学中も研究を止めずに論文を書き続けていました。あれは本当にしんどかった。
その点、二年半修了なら安心です。留学で半年間研究が止まっても、残りはまだ二年間もあります。二年あれば、早期修了の業績要件を十分に満たせるでしょう。
D1後期に留学して海外との相性を確かめてから、進路を決めればいい。海外生活に手応えがあれば海外就職の準備を加速すればいいし、やっぱり合わないと感じたら国内就職に舵を切ればいい。選択肢を増やしてから決められるのが、半年短縮修了の強みではないでしょうか。
半年間、就活に専念できるから

博士学生の本業は研究です。専攻ごとに定められた業績要件をクリアしたうえで、研究成果を学術論文として出版する必要があります。さらに、それらをひとまとめにした博士論文まで仕上げる。知的な重労働と呼ぶにふさわしい負荷ですね。実際、負荷に耐えきれず中退していく方もチラホラいます。
博士課程は研究活動で手一杯なのに、就職活動まで並行する必要があります。研究の合間を縫って応募書類を整え、企業研究や面接対策にまで頭を使う。これって、相当な負担です。私はD1後期に就活しましたが、論文執筆との同時並行で思考回路がパンク寸前でした。企業研究が甘いまま入社すると社風とのミスマッチが起きるリスクがありますし、せっかく就職するなら自分に合った会社で働きたいですよね。
研究にも就活にもしっかり時間を割ける裏技みたいな方法はないものか。あるんです。博士課程を半年短縮で修了してから、就活を始めればいい。
博士課程修了後の身分は、ポスドクとなります。ポスドクなら、中途採用枠で企業の選考に応募できるでしょう。早期修了できるほどの専門性が育っている方なら、企業が即戦力に求める水準は十分にクリアしているはず。中途採用枠は一年中応募できるので、半年短縮修了直後の10月にエントリーしても面接してもらえます。
半年短縮修了の最大のメリットは、研究と就活を時期的に分けられること。最初の二年半は研究に全振りし、学位審査会を乗り越えてから就活に専念するんです。自己分析と企業研究を入念にやって、自分に合った会社を見つけましょう。
中途採用枠では、実務経験のある転職者と競うことになります。怖いですか? 大丈夫です。半年短縮で博士号を取った実績があれば、選考で十分に戦えますから。
ここまで読んで疑問が浮かんだ方もいるでしょう。最後の半年間、生活費はどうするのか、と。
博士学生おいおい。お金はどうするんじゃ。博士学生をやめたらフェローシップも奨学金も打ち切られるじゃろ。そがいななか、どがぁして暮らせっちゅうねん。あぁ?ぶちのめすぞ、てめぇ。食いちぎったろか



落ち着いてください!ちゃんと秘策を考えてあります。次章でお伝えしましょう。だから食べないで、お願い!猫さん。お願い、ちょっと待って!



にゃ~ (*≧∀≦*)
【学振DC採用者限定】学振PDへ資格変更して高給を受け取られるから


最後の章は、学振DC採用者に限った話。
学振DCには資格変更制度があります。博士号を取得した後、ポスドクとして研究を続ける方は、学振DCから学振PDへ資格を変更できるんです。名称が変わるのに加えて、月給が20万円から36.2万円に上がります。額面ベースで1.8倍。年収に換算すると240万円から434万円ですね。
2025年2月時点の制度では、DCからPDに変更しても博士在籍中と同じ研究室にそのまま所属できます。研究環境も人間関係も博士課程時代のまま、給与が跳ね上がるわけです。半年分の生活費はもちろんカバーできますし、就活で発生する交通費や諸経費も問題なく賄えるでしょう。
半年短縮修了なら、学振PDとして半年間活動できます。就活を進めるもよし、博士在籍中にやり残した研究を片付けるもよし。時間を存分に使ってください。
ちなみに、学振DCには研究奨励金特別手当もあります。任期の最終年度に月3万円が上乗せされる制度です。半年短縮修了する方の場合、受給の見通しは以下のようになります。
- D3の4〜9月:月給20万円+特別手当3万円
- PDの10〜3月:月給36.2万円
一年短縮で企業に就職する場合は、修了と同時に入社するのでPDへの切り替えはスキップです。私自身、本来D3になるはずだった年度の4月から企業で働き始めたので、特別手当もPDの高給も受け取る機会を逃しました。半年短縮修了にしておけばよかったかなぁと、ちょっと後悔しました。






















コメント